リアルな接点がない就活は
「決め手」の喪失につながる
そうした「世界で最も難しいやりたいこと探し」の就活の中で、とりわけ最後の決め手として機能してきたのが、出会った「人」だ。極めて多くの学生が、リクルーター、面接官、採用担当者など、就活中に出会った「中の人」か、「その人の背景に見る、自身の将来像」を最後のトリガーとする。特にここ数年は、内定者があまりに「御社の社員に引かれました」と連呼するので、「我が社は人こそ強み」と認識(誤解?)している企業も多く目につく。むしろ、これほどの曖昧さと情報の非対称性がある中では、「決め手になるのが人という要素しかない」と見るほうが正しい。
つまり、冒頭の話に戻ると、今回の新型コロナ騒動で「人」との接点が少なくなることは、学生にとっては「決め手」の喪失を意味する。すでに夏・冬のインターンでリアルな接点を作ってきた学生は、出会いという既成事実を生かして順調に就活を終えるだろうが、体育会系の学生や留学生など、さまざまな事情でその波に乗り遅れた学生は決めきれない。かねて予想されていた「就活生の二極分化」が、オンライン化によってさらに進むだろう。
さらに、その決め手がない中でなんとか内定獲得・就職したとしても、もう1つの落とし穴がある。それは、入社前のイメージと入社後の現実のギャップ、「こんなはずではなかった」というリアリティー・ショックだ。就業経験を経ない日本の就職慣行においては、7割以上の新社会人が何かしらのリアリティー・ショックを受けることが明らかになっている。
このギャップを防ぐためには、入社前に会社のことや自分との適性をどれほど正確に理解できたか、が鍵となる。組織論の専門用語では「予期的社会化」と呼ぶが、入社前に、会社や組織に対して正しい構えを作り、この予期的社会化を進めるのが、まさに人との「リアルな接点」なのだ。具体的には、インターンシップや説明会、社員との人脈構築、企業・職場の雰囲気の理解、相談できた社員の数などによってこの予期的社会化が促進されている(詳細:パーソル総合研究所×CAMP「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」)。
さらに、リアリティー・ショックは、「入社した直後」だけのことではない。ショックが低い群と高い群を比べると、社会人3年間でも大きく会社満足度に差が出ており、この差は直接的に早期離職へとつながっていく。
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