日本の就活は
「世界で最も難しいやりたいこと探し」

 しばしば指摘される通り、日本の若者の多くが経験する「就活」は国際的には極めて特殊な慣行だ。多くの若者が大学生の後半という遅いタイミングから就職のことを考え始め、本格的な就業経験を経ることなく、入社後の職種を限定しないまま就職していく。さらに現在は、売り手市場化、ネット就活の一般化、新卒採用手法の多様化という要因が、さらなる「情報と選択肢」の増加をもたらしている。特殊性が幾重にも重なっており、こんな若年者入職の姿はおそらく世界のどこを探してもない。

 学生にとっては、これほど(見かけ上の)情報と選択肢がある中で、たった1社の就職先を決めることは極めて難しい。このことをまとめて、筆者はしばしば「世界で最も難しいやりたいこと探し」と呼んでいる(ちなみに、新卒者への「通年採用」がなぜか就活を終わらせるようなバズワードとして喧伝されているが、卒業後4月の「一括入社」が変わらない限り就活の構造そのものは不変のままだ)。

 こうした就活の中で、学生はどのように会社を決めていくのか。自分のやりたいことや、なりたい姿からの逆算からか、というと違う。学生の就活開始時期と「やりたいこと」の決定時期を並べると、「就活を始めてから、やりたいことが決まってくる」形のカーブを描く。「やりたいことがあって、それに合わせた就職先を探す」ではなく、大多数が逆だ。就活を始め、そこで出合った企業の中から、自分が合いそうな就職先を探すのがほとんどの学生のパターンだ。

就職活動と入社後の実態に関する定量調査出所:パーソル総合研究所×CAMP 「就職活動と入社後の実態に関する定量調査」
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 だからこそ、多くの学生は、業界研究や自己分析やエントリーシート提出などの就活「序盤」のプロセスで苦労することになる。「やりたいこと」は動かないと見えてこないにもかかわらず、最初に「動く」ための足がかり(=内的動機づけ)を欠いているからだ。どうにか周りに突き動かされて動いてから、徐々に行きたい業界や会社が見えてくる。