米中はデカップリングから
相互排除に向かう

 すでに米中の間では、ウォール・ストリート・ジャーナルが掲載した「中国はアジアの病人」という記事を巡り、激しい応酬が繰り広げられている。

 中国は同紙の記者3人の国外退去を命じ、これに対し米国は米国駐在中国人記者の総数を100人以下に限るなどの措置をとっている。

 米国内では新型コロナウイルスの感染が拡大しており、人々の嫌中感や対中差別的雰囲気が高まる可能性がある。

 共和・民主両党とも対中強硬姿勢は同じで、大統領選では強硬路線を競うことになるのだろう。昨年秋の米中貿易協議の第1段階の合意も、経済の落ち込みが大きい中国は米国農産物の輸入拡大などを合意通り、実施するのは難しいと思われる。

 新型コロナウイルス問題が一段落したとしても、米中の間には、香港や台湾問題など、対立の火種が残ったままだ。香港の民主化運動は根強く続くだろうし、新型コロナウイルス感染を最小限で食い止め、支持率も上がった台湾の蔡英文総統は自信を深め、独立志向を強めるだろう。米中の戦略的対峙も深まる。

 今年11月の米国大統領選挙結果は、今後の国際政治の展開を考える上で大きな意味を持つ。

 パンデミックで米国民の内向きの意識が強まるなか、トランプ大統領がアメリカ・ファーストを改めて訴えて再選に成功する可能性は高まった。

 だとすれば、今後5年余りの世界は自国中心主義がさらに加速されることになるだろう。

 そうなると、強権体制の下、国内の感染拡大に形の上では歯止めをかけた中国との関係はどのようになるか。

 米中関係については、通常の貿易や投資では、双方にメリットがあるので、緊密化することはないにしても縮小することはないが、ハイテク分野での技術開発や投資、貿易は通常の貿易・投資とは切り離し(デカップリング)、お互いを排除した経済圏を形成していくという予測が強かった。

 だがパンデミックを機に、米中間はハイテク分野でのデカップリングにとどまらず、通常の経済関係を含めた相互排除にまで発展することになるのではないか。

国際社会の分断が進む
崩れる先進民主主義国の協調

 そして分断は、米中間だけに終わるものではではない。

 新型コロナウイルスの感染拡大防止ということで、米国は英国を除く欧州からの入国を唐突に禁止したが、安保や経済関係を巡る米国と欧州の不協和音は、このパンデミックを通じてもさら大きくなっていく可能性が強い。