感染拡大を防ぐ対策をした場合

 次に、感染拡大を防ぐ対策をした場合を考えよう。この場合は感染が遅くなるので、感染した1週間後に、1人にうつすことにしよう。

 1日目は、ウイルスBに感染した人が1人。2日目も、1人。3日目も、1人。4日目に、1人死亡。そして、ウイルスBは絶滅する。

 つまり、1週間だけ考えた場合、感染拡大の対策をしなければ、ウイルスBの感染者は42人で、そのうち死亡者は12人。対策をした場合は、感染者は1人でそのうち死亡者は1人、しかもウイルスBは絶滅することになる。
 
 一方、毒性の弱いウイルスCの場合は簡単だ。対策をしなければ、1日目が1人、2日目が2人、3日目が4人と、毎日2倍に増えていくので、1週間後には感染者は128人で、死亡者はゼロ。対策をした場合は、感染者は2人で、死亡者はゼロになる。

 つまり、感染拡大を防ぐ対策をしない場合は、合計で感染者が170人、そのうち死亡者が12人になり、対策をした場合は、合計で感染者が3人、そのうち死亡者が1人になる。ここで重要なことが2つある。

 1つは、死亡者の数だ。ここでは1週間しか考えなかったけれど、対策をしなかった場合は、この後もどんどん死亡者が増えていく。一方、対策をした場合は、もう死亡者は増えない。死亡者の数に大きな差がでてくるのである。

 もう1つは、毒性の強いウイルスBについてだ。対策をしなかった場合は、ウイルスBは絶滅しない。しかし、対策をした場合は、ウイルスBは絶滅したのである。
 
 このたとえは単純すぎるけれど、一般的な傾向として、感染速度が遅くなればなるほど、毒性の強いウイルスは、(他の人にうつる前に感染者を殺してしまうので)広がりにくいのだ。毒性が強ければ強いほど、この効果は強くなるので、感染拡大を防ぐ対策は、ウイルスを弱毒化して、死亡者を減らす効果があるといえる。

 もちろん、ウイルスの進化は偶然にも左右されるので、感染を防ぐ対策をしても万全ではない。強毒化してしまう可能性もゼロではない。ゼロではないけれど、それでも対策をすれば、ウイルスを弱毒化する可能性が高くなるのは確かだ。感染拡大を防ぐ対策はした方がよいのである。