感染症はすべてつながっている
丸抱えで診る体制づくりが必要

 2004年3月、過酷な修業を終えて帰国した大曲先生を迎え入れたのは、静岡県立静岡がんセンター(以下、静岡がんセンター)だった。

「がん患者さんを対象とする感染症科の立ち上げを依頼されました。がん患者さんは感染症にかかる率が非常に高い上に治療も難しいので、予後を伸ばすためにも感染症科は必要なものだったのです。しかし、当時日本のがんセンターの中で、感染症科をつくろうとしていたのは静岡がんセンターだけ。治療の難しさはMDアンダーソンでも痛切に感じていたので、だからこそ頑張らなければいけないと思いました。

 とにかく、まずは経験をたくさん積もうと、日曜日にもべったりと在院するようなスタイルで、学びながら働いていましたね」

 懸命に働き、かかわった患者を治し、がん専門医から認められることで、がん医療における感染症内科の重要性を周知させていった。近年、日本中の医療現場で問題になっている抗菌薬適正使用などの改革・改善への取り組みもスタートさせた。

 2011年には国立国際医療研究センター病院に移り、翌12年には新設された国際感染症センターのセンター長に就任。

「そもそも、ここに来たのは、感染症対策に横串を刺して取り組む組織を作るためでした。

 感染症をやっていると医療、すべてはつながっていると感じます。

 例えば、抗菌薬の不適切な使用を背景に増加している薬剤耐性菌の問題も、当初は国内の問題でしたが、今は海外からも耐性菌が持ち込まれるようになり、国内外の区別なく取り組まなくてはならない問題になっています。新型コロナウイルスも、最初は海外から入ってきたとしても、国内に入れば今度は院内感染が問題になる。国内外とか病院の内と外とか、診療科とか無理やり分けたところで、患者さんの背景も抱えている疾患も含めて多様なので、結局は全部丸抱えで診るのが感染症科なのだろうと思うようになりました。

 なので、われわれの感染症センターも、丸抱えで診られるような体制を組んで診療にあたっています」

 現場で鍛えられ、現場で学び、現場を育ててきた大曲先生。感染症医療がすべてつながっているように、先生の医師人生もまた、すべてをつなぎ、合流させて未来へと伸びていく。

◎大曲貴夫(おおまがり・のりお)
国立国際医療研究センター病院総合感染科科長、国際感染症センターセンター長。
感染症一般の臨床や病院内外の感染防止対策、感染症に関する危機管理を専門とし、「中東呼吸器症候群(MERS)等の新興再興呼吸器感染症への臨床対応法開発のための研究班」研究者代表を務めた。