実際、毎日300人を超えるコンゴ人がルワンダでの仕事のために、毎日国境を越えて働きに行き、日帰りで帰ってきているという。また、週4日の飛行機により頻繁に行き来があるキンシャサも流行先としてのリスクが高まった。

 このことにより、WHOは「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。西アフリカの「エボラ」以来である。

封じ込めがうまくいかない2つの理由

 なぜ赤道州での流行と異なり、北キブ州では封じ込めがうまくいかないのか。

 そこには2つの大きな理由がある。「治安」と「住民の抵抗」である。

 この地域は紛争が長く継続しており、誘拐や反政府ゲリラの攻撃があることから、コンゴ民主共和国の保健省スタッフでさえも、移動に警察や軍の同行が必要な地域が多い。また予防接種や治療を拒否する住民も多い。その理由には、この地域のこれまでの歴史と関係があるようだ。

 1994年、この地域の隣国のルワンダとブルンジにおいて大虐殺が起こったことは、「ホテル・ルワンダ」という映画で有名である。ルワンダからこの地域に逃れてきた難民のために、大規模なルワンダ難民キャンプがUNHCRにより運営されていた。1996年、ウガンダ新政権は国境を越え、コンゴ民主共和国内の難民キャンプを襲撃。ルワンダ難民だけではなく、周囲のコンゴ民主共和国の一般住民数万人を虐殺したという。

 この事件がこの地域の治安に大きく影響している。この時、コンゴ民主共和国政府も国連機関も、この虐殺を止めなかったという。住民の多くが政府のみならず、国連機関にも不信を抱いていたのである。

 また、この地域は携帯電話やノートパソコン、ゲーム機などの電化製品のコンデンサーなどに用いられるコルタンというレアメタルの産地としても有名である。隣国のルワンダ、ウガンダ、ブルンジの武装勢力が、コンゴ民主共和国内の天然資源を不正に採掘し、それによって得た利益が武装勢力の資金源となっている。

 これがコンゴ民主共和国における地域紛争を長期化させているという。地政学的にとても難しい地域であることが、エボラの封じこめにも影響している。