共働きなのに貯まらないワケ

 夫婦それぞれに収入がある上田家では、生活費を分担している。夫は公共料金の一部、住宅ローン、保険料、車の維持費などを担当し、妻の加奈子さんは、残りの公共料金、食費や日用品費、3人の子どもにかかる主だった教育費を担当している。

 実は加奈子さん、夫の正確な年収を「知らない」という。結婚してからというもの、家計は分担してそれぞれでまかなえていたので、報告しあう必要がなかったのだ。貯蓄もそれぞれが管理しており、お互いがいくら貯めているのか全く知らない。

「お互いの収入や貯蓄額を知らない共働き夫婦は珍しくありません。ただ、この『内緒』と『不干渉』が、共働きなのに貯まらない原因です」

深田晶恵氏 ファイナンシャルプランナー 深田晶恵氏 Photo by Shinsuke Horiuchi

 ファイナンシャル・プランナーの深田晶恵氏は、こう指摘する。

 夫婦2人、あるいは子どもが小さい時期は、お互いの収支を報告しなくてもまかなえていたかもしれない。しかし、子どもの成長とともにかかる費用が増えてくるとそうはいかない。

「今50代以上で、共働きで子どもを育ててきた女性たちは、男女雇用機会均等法の第一世代で、当時でも男性並みの給与を稼いできた人がほとんどです。つまり、お互いの収入を知らなくても、問題なく貯蓄することができました。

 しかし時代が変わって、若い世代は男女ともに給与水準は抑えられ、今の共働き夫婦は、2人合わせてバブル世代の男性1人と同じか1.2倍くらいの収入を稼ぐのがやっと。さらに税金や社会保険料の負担が増えているため、手取り収入も減り続けています。これで内緒と不干渉をやっていたら、いつまでも貯まりません」(深田氏)

 共働き夫婦が共有しておくべきだと深田氏が挙げるのが、「お互いの収入」「それぞれの貯蓄総額」「毎月の貯蓄額」の3つ。今さら言いづらい……という場合は、最低限、毎月とボーナスでいくら貯めているか(あるいは貯める予定か)だけでも共有しておきたい。

 加えて、上田家の場合、夫が担当している費用は公共料金や住宅ローンといった「固定費」が中心なのに対して、妻の加奈子さんが担当する食費や教育費は、子どもの成長に応じて負担が大きくなる「変動費」だ。つまり、加奈子さんは、子ども3人が大きくなるにつれて膨れ上がる費用を1人の収入で何とか工面しようとしていたのだ。これでは、やりくりが苦しくなってしまうのも無理はない。

 夫に相談すればいいのでは?と思うかもしれないが、自身も“手に職”のある妻が、自分の収入や貯蓄だけで家計の担当分をなんとかやりくりしようとするケースは少なくない。子どもの教育費のために、泣く泣く自分の貯金を切り崩す人もいるという。

 では、どのように家計の負担額を見直してみるとよいのだろうか。

 深田氏は、現在の自分の負担額やそれぞれの子どもにかかっている費用などがわかる資料を用意した上でパートナーに相談することをおすすめする。

 加奈子さんの場合、昨年中学2年生だった長男には1カ月で2万5000円の塾代がかかっていた。今月から中学生になった次男も同じ塾に通うとなると、さらに負担が増えるのは明白だ。

「『子どもが3人とも小学生以下だったときはいくらだったけど、2人が中学生になると○円負担額が増えて、私の収入では苦しいから半分負担してほしい』というように、夫に話してみましょう。話し合うときには、愚痴から言わないこと、結論から切り出すことも大切です」(深田氏)