アビガンは、富士フイルム傘下の富士フイルム富山化学が開発した薬で、国内では2014年3月に製造販売承認を取得している。これまでのさまざまな研究から、インフルエンザウイルス以外にもエボラ出血熱など複数の感染症に有効性を示す可能性が示唆されており、今回のCOVID-19に対しても、中国科技部が(日本の文部科学省に相当)2本の臨床試験の結果から、「有効である」との見解を示したことで注目されていた。

 また、4月3日には、ドイツ政府が数百万錠の大量調達に動いていると報道された。ドイツの感染症対策の第一人者は「非常に有力な薬」と評価しており、重症患者に投与される予定だという。

 国内でも、藤田医科大学病院(愛知県)などで既に臨床試験がはじまっている。

 ただし、中国での臨床試験は、ランダム化(被験者が、新薬を投与されるグループなのかプラセボ:偽薬が投与されるグループなのかが、ランダムに決められている)されていなかったり、盲検化(誰がどの薬を投与されているのか、被験者本人にも担当医にもわからないようにする)されていなかったり、別々の期間に被験者の組み入れを行っていたりなど、臨床試験デザイン的な信頼性に問題があり、「COVID-19への有効性を示す十分なエビデンスとは言い難い」との指摘もある。

 この先アビガンが、日本でCOVID-19の治療薬として認められるには、「有効性を示す十分なエビデンスが得られる臨床試験」を経なければならないわけだが、それは一体どのようなものなのだろう。

 3月23日、国内発生当初からCOVID-19の診療にあたってきた国立国際医療研究センター(NCGM)は、メディア勉強会を開催し、アメリカ国立衛生研究所(NIH)と共同で抗ウイルス薬「レムデシビル」(ギリアド・サイエンシズ社)の医師主導治験を行うことを発表した。

 レムデシビルは、2月に中国を視察した世界保健機関(WHO)の担当者が、「(レムデシビルは)現時点で本当に治療効果があるとみられる唯一の薬」と発言したことで、「有望薬」として一気に注目を集めた。

 果たして、COVID-19に対して安全で効果がある薬はあるのか、「アビガン」なのか「レムデシビル」なのか、ほかの候補なのか。適切な治療法は何か、など刻一刻と変化する情報を適正に判断するために、勉強会においてNCGM国際感染症センター長の大曲貴夫医師が説明した内容(治験の概要と今後の展開)を共有しておきたい。