「メシ、風呂、寝る」からの脱却と
フィンランドの状況

さらに、もっとひどいことがあります。
大学を卒業して社会人になったら、待っているのは年間約2000時間の労働です。

フランスやドイツの年間約1400時間労働と比べると、仮に年間200日働くとしたら一日3時間も違うのです。

日本では残業に記録されないサービス残業があり、さらに一部の古い体質の会社では、仕事が終わった後、部長が若い社員を飲みに連れていくわけですから、社会人になったら「メシ、風呂、寝る」の生活しかできない。

これではいつ勉強するの? と心配になります。

でも、世界ではAIをはじめとするテクノロジーの進化が加速しています。
今、世界では、大学を卒業して10年くらい働いたら、10年前に勉強したことはほとんど役に立たなくなっているから、また勉強し直し、企業と大学を往復しなければいけないという考え方が常識になりつつあります。

フィンランドでは、国民の3分の2が一生涯に仕事をチェンジするそうです。

教師や医者など、同じ仕事を生涯やっている人は全人口の3分の1。
面白いのは、この3分の2の仕事をチェンジする人の半分が、仕事をチェンジするときに、新しい資格を取ったり、大学に行き直して学位を取ったりしていることです。

だからこそ、フィンランドの国際競争力は高いですし、1人当たりGDPで見れば、
フィンランドは
日本の1.25倍もある
のです。

そして、労働時間は短い。
フィンランドでは、午後4〜5時になったら仕事をやめて帰宅する人が多いといわれています。

よく残業する人は能力がないと思われていますが、短時間労働でもしっかり勉強していればアイデアはたくさん出ますから、
1人当たりGDPが
日本より25%も高い
豊かな国
をつくっているわけです。

 続きは次回にしましょう。

 過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。