好調なマンション販売

 2012年上期のマンション供給戸数は、昨年の震災による反動からか、かなり増えたようだ。各種報道によると、月内契約率も目安となる70%以上を維持し続けており、好調といっていい状況が続いている。

 ディベロッパー関係者と話していると、「即日完売物件や高倍率住戸も増えている」そうで、業界内では今後の販売動向に手ごたえを感じている会社が多いようだ。

 私も暇を見つけてはモデルルームを訪れているが、格差はあれども販売好調だろうなと感じる物件が多い。こうした状況は首都圏だけでなく、近畿圏でも同じだ。

 はたして、業界内にある新築マンション販売の高揚感は、本物なのだろうか。そして、ユーザー視点では今、買い時だと言えるのだろうか?

湾岸タワーマンションと
マンションブームの関係

 先回の本連載第6回でも取り上げた湾岸タワーマンション。東京湾が目と鼻の先の、汐留や浜松町、品川、芝浦、豊洲などに立っているマンション群だ。

 これら湾岸タワーマンションは震災の影響をモロに受けて、ディベロッパーは販売に慎重だったが、昨年末くらいから販売を再開させ始めた。

 震災後、だれもが海に近いエリアはマンホールがにょきにょき盛り上がり、泥水が吹き出す液状化のイメージを持ってしまった。あの強烈な映像は、湾岸エリアに住むことを考えた誰の脳裏にも浮かんだことだろう。

 ところが、「意外に好調だ」という。この意外感はすぐに業界関係者のあいだで共有され、「じゃ、うちもそろそろいくか」という空気に包まれたようだ。

 首都圏では、豊洲、晴海、有明、東雲……といった埋め立て地から、田町・芝浦・品川といったエリアを総して湾岸エリアといっているが、なにせ、このエリアに大手ディベロッパーは多くの土地をかかえている。デッベロッパーから見ると仕込んでいるともいえるが、見方を変えると土地の在庫と言えるから、できれば早く事業化して販売したいという本音がある。

 この湾岸エリアでは、今年の秋から来年初めにかけて、多くの物件の販売が予定されている。

 湾岸マンションブームは2000年代の初頭からしばらく続いた。都心には10~20分でアクセスできるから通勤に便利だ。それに、新しく開かれたイメージと海と夜景が見える眺望。そして、都心に比べての値ごろ感。こうしたことから、若い世代を中心に人気が高まった。流行を追いかけたい思考の人に、かなり人気を博した。

 こうした影響を受けて、湾岸エリアだけでなく首都圏の広い範囲で、“プチ”マンションブームが起こり、それが新築分譲マンション全体の価格を上昇させた。これは、2007年の中ごろから年末がピークで、その後はリーマンショックに陥り、ブームは去った。

 今年の後半から来年にかけて湾岸エリアマンションの大量供給が開始される。一気に供給されるのは、少なからず震災の影響があるのだが、この大量供給時の販売物件が好調ということになると、かつてのように湾岸エリアマンションから火が付いた、“プチ”マンションブームが来るのかもしれない。そして、それはディベロッパーを強気にさせ、価格上昇へとつながるかもしれない。