しかし、年後半の世界経済がどうなるかは、感染の動向と、それがもたらす経済への影響の広がり方に左右される。感染の食い止めにはワクチン開発が欠かせない。臨床試験や量産体制の確立に必要な時間を考えると、当面、世界全体で人の移動制限は続けざるを得ないだろう。それを考えると、V字型の回復の可能性はそれほど高くないはずだ。世界経済の回復はU字型、L字型の展開をたどる可能性もある。

 現時点でV字回復を想定するのはかなり楽観的ともいえる。それでも、4月上旬の米国株式市場やジャンク債市場の動きを見ていると、日々の感染者数などの推移をもとに押し目買いのチャンスが到来したと浮かれ気味の投資家は少なくない。

 冷静に事実を確認すると、浮かれている場合ではない。感染に伴う政治機能の低下に加え、外出できないストレスから世界的にドメスティック・バイオレンス(DV)が増えるなど、社会心理が抑圧されている。失業増加による治安悪化、医療制度が脆弱(ぜいじゃく)な国や地域での情勢不安定化も懸念される。

 外出制限の強化に伴い、世界の政治・経済・日常生活を支えてきた価値観、常識が大きく変化している。テレワークは世界のメガトレンドだ。医療制度の拡充、休業への補償などのセーフティーネット整備は喫緊の課題だ。世界各国は協力して公衆衛生の向上と生命の保護にも取り組まなければならない。

 感染が落ち着いたとしても、価値観の変化を人々が習熟するには時間がかかる。今後、経済環境の悪化に加え、社会を支えてきた価値観の変化に各国がどう対応するか、人々の変化を認識する実力が問われている。

(法政大学大学院教授 真壁昭夫)