目の前のことを一生懸命やりながら、過去を捉え直して進む

カツセ: この本は、サクちゃんが中立ではなく、やりたいことがない圧倒的「叶え組」の立場で考えたことを書いているからしっくりくるんですよね。その上でいいなって思ったのが、44ページー

未来を想像できないとき、邪魔をしているものはだいたい過去で、いつかの思い込みやガマンのフタを剥がして捉え直すことで、未来に目が向けられるようになる。

僕自身もやりたいことがわからない時期があって、それは誰かの言葉や過去の経験によって封じ込まれていたと思うんですよ。たとえば幼い時に、クラス全員の前で逆上がりができなかったから、鉄棒が苦手だとずっと思い込んできたとか。些細な過去の失敗によって自分の将来が描きにくくなることがある。

桜林: あるある。鉄棒で失敗した時に、「自分は鉄棒ができない人間なので」とするのが一番楽。でも、それだとずっとできないまま。同じように、「叶え組だからやりたいことがなくてもいいんです」と閉じてしまうのはよくないと思っていて。叶え組も、やりたいことじゃなくても目の前のことを一生懸命やって、考え続けなきゃいけない。

カツセ: そこなんですよ!サクちゃんは叶え組なんだけど、こうして本も出しているし、『セブンルール』にも出演している。側から見ると成功体験が多いように見える。でも、本を出したい、テレビに出たいって思っていたわけではなく、ただ自分にできる、目の前のことを一生懸命やっていたら、そういう機会が訪れた。

桜林: そうですね。noteで文章を書くことは、仕事でもなければ、お金ももらっていないし、人に頼まれたわけでもない。誰かの期待に応える必要がなかったから、ただ書き続けることができたんだと思う。本を書こうと思ったわけではなくて、結果的に、たまったものが本になった。その時は自覚がないんだけど、振り返るとそうなってたってことが多いですね。

カツセ: 難しいのが、目の前のことを一生懸命やるっていうのは、ガマンをしないってことと相反することのようにも思えるんですよね。夢組の視点からすると、やりたいと思っていないことをやり続けるのはガマンに感じてしまうから。

桜林: ふむふむ。私も20代の頃はずっとここじゃないと思っていたけど、今でも「いいから目の前のことを一生懸命やれ」と思うし、やってきてよかったと思う。ガマンとの線引きは難しいけど、あれもこれも違うとやめていくと、どこにもたどり着けなくなってしまうから。あと、これは性質なんだけど、私はやりたくないことのなかに自分が楽しいと思えることを見つけるのが得意。

カツセ: おお、それは才能ですね。ミスチルも『CENTER OF UNIVERESE』って曲で歌ってましたよ、「どんな不幸からも喜びを拾い上げ、笑って暮らせる才能を誰もが持っている」って(笑)。

桜林: この本の主題歌にする?(笑)

カツセ: やめて怒られそうだから(笑)。

桜林: そうそう、叶え組は誰かの夢に乗っかることもできるんですよ。「水曜どうでしょう」のディレクターの嬉野さんがイベントで「やりたいことはないけど、どの船に乗るかは自分で決めたい」と言っていて。

カツセ: ああ、かっこいい。叶え組の鏡ですね。やりたいことはなくても、海賊王の船のクルーになれる力があるわけですもんね。

桜林: ワンピースね(笑)。やりたいことがなくても、能力があれば、いつでも夢組の船に乗ることも降りることもできるから、むしろ自由。だからやっぱり、叶え組だからといって、目の前のことをないがしろにしたり、何もしないのではなくて、自分にできることをやっていくしかないんですよね。

後編につづく。