「寄付するなら1億元、
飲むなら王老吉」の効力

「このような奇抜な作戦ではなくもう少し普通のアプローチを取りたい」「でもカネはあまりない」というわがままなニーズの方が現実には多いでしょう。その場合には、「他力」をうまく利用することをオススメします。もちろんおカネも払わずに、こちらの思惑通り力を貸してくれる奇特な他人は、特に中国にはまずいないので、「チエ」を絞る必要があります。

 他力を利用して知名度を高める方法は、大きく分けると2種類あります。すでに知名度のある他人に「乗っかる方法」と、他人をうまくそそのかして、知名度を上げる作業を「手伝ってもらう方法」です。

 他人に乗っかる方法の場合には、既に知名度のある「流通チャネル」、「競合」、「オピニオンリーダー」や「天の時」(機会)の力を借りることになるでしょうし、他人に手伝ってもらう方法では、「顧客」の力を借りるのが一番でしょう。今回は、それぞれの方法について具体例をあげて説明したいと思います。

 知名度のある他人に乗っかる形で、自社の知名度を上げるという方法の代表例として、以前の連載(本連載第64回)でも紹介したカフェ・ベーカリーチェーン85度Cの「星巴克(スターバックス)」の隣に出店するという「競合」の力を借りる戦略がありますが、今回は別の例を紹介したいと思います。他人というよりは「天の時」を利用して知名度を高めたという事例です。

 皆さんは「王老吉」というソフトドリンクをご存じでしょうか?

「王老吉」は寄付が契機で大ヒット

「王老吉」は、漢方成分の入った涼茶で、中国ではコカ・コーラより飲まれている飲み物です。この王老吉が知名度向上のために利用した「天の時」が、2008年に起こった四川大地震です。

 当時この大災害に様々な企業が義援金を送りました。中国でビジネスを行う多くの日系企業は横並びの100万元(≒1250万円)程度、ローカルの大手企業でも数千万元程度の義援金でした。そこに、当時「王老吉」を生産販売していた加多宝の経営トップが、テレビ番組で破格の「1億元」の義援金を発表したのです(現在加多宝は、商標上の問題で王老吉の販売を停止し、加多宝という名称の涼茶を販売しています)。

 この後、中国全土に広まったのが「寄付するなら1億元、飲むなら王老吉」というキャッチフレーズです。実際に加宝多の売上は2007年の50億元から2008年の120億元へと2.4倍に増えました。災害をビジネスに利用するのはどうか、という議論もあるかと思いますが、うまく注目される機会を利用し、なおかつ社会的に意義のあることをしながら、ビジネス上でも結果を出した例として、日系企業も見習うべきところがあると思います。使えるカネが限られているのであれば、ここという領域やエリアに集中して投資しなければ中国では勝負にならないのです。