自分自身を振り返り
感情の癖を把握する

 親自身が自分のEQを高めるには、まずは自分の現状を把握する必要がある。そのためにも自分を振り返る時間をもつようにしたい。

 たとえば、自分の感情コントロール力について、さまざまな場面での自分の感情反応の傾向を振り返ってみる。

 自分がどんなときに感情的になりやすいか。イライラするときやカッとなったときに、攻撃的な衝動を抑えることができるか。怒りを爆発させたり、ヤケになったりすることがないか。どんなときに感情コントロール力を失いがちか。

 そんなふうに振り返ってみると、自分の感情反応の癖について、何らかの気づきが得られるものだ。そうした癖が、知らず知らずのうち、子どもに影響を及ぼしている。

 親が怒りを爆発させたり、嘆き悲しむような、感情に溺れる姿は見せないように気をつけたい。親が自分の衝動や感情をコントロールできないでいると、子どもも思い通りにならないときに衝動的に怒りを爆発させたり、ちょっとしたことで嘆き悲しんだりするようになる。

 一方、感情を適切にコントロールできる親のもとで日々を過ごしている子は、自然に感情コントロールができるようになる。

 子どもに感情的になるときだけでなく、他の人に対して感情的になるときの様子も子どもはしっかり観察しているので、外での出来事について家庭で話すときも気を抜けない。

 自分の忍耐力や頑張る力についても、さまざまな場面を振り返ってみるべきだろう。

 これまでに粘り強く取り組んだことはあったか。飽きたり、嫌になったりして、途中で投げ出したことはなかったか。途中で諦めて、後悔したことはないか。困難に直面したとき、どんな反応を示しがちか。苦しい状況でも頑張り通したことはあったか。今、自分は頑張っているか。粘り強く取り組んでいることはあるか。

 そのように振り返ることで、自分の忍耐力や頑張る力について、何らかの気づきが得られるはずだ。

 さらに共感性や思いやりについても、さまざまな場面を振り返ってみる。

 人の気持ちに寄り添って行動できたことはあったか。人の気持ちに寄り添うことができずに、相手を傷つけてしまったことがないか。人の気持ちに常に関心を向けているか。思いやりがないというようなことを言われたことはなかったか。人の気持ちに鈍感なところはないか。

 そのように振り返ってみると、自分の共感性や思いやりの傾向について、何らかの気づきが得られるはずだ。

 そうした親自身の心理傾向が、日頃のやりとりや観察を通して子どもに伝わっていく。

 親の口癖にも注意したい。

 多くの人が自分の口癖を意識していないが、口癖というのは思考パターンのあらわれである。親のちょっとした口癖が子どもの口癖に影響し、それが子どもの思考パターンを形づくっていく。そう考えると、日常の何気ない口癖も決して軽んじることはできない。 

 子どもがいつの間にか自分の口癖をまねているのに気づくことは、親になればだれもが経験しているはずだ。

 たとえば、親が何かにつけて、「もうダメだ」「そんなの無理に決まっている」「そんなこと、できっこない」などと悲観的な言葉や諦めの言葉を口にしていると、子どもも悲観的ですぐに諦めるようになってしまう。

「逆境に強い子ども」を育てるために、親がすべきこととは伸びる子どもは○○がすごい』 日経BP社、850円(税別)

 反対に、親が日常的に、「何とかなる」「やってみないとわからない」「やるだけやってみよう」「とにかく頑張ってみよう」などと前向きの言葉を口にしていると、子どもも前向きに頑張れるようになる。

 したがって、親は意識して前向きで粘り強さにつながる言葉を口にすることが大切だ。

 また、子どもに対して話すときも、「やめようか」「無理しなくていいよ」などといった後ろ向きの言葉でなく、「よし、頑張ろう」「諦めないでやってみようか」など、前向きで粘り強さにつながる言葉がけを意識したい。

 こうした日常の何気ない親子のやりとりを通して、子どもはEQを身につけていく。それゆえ、親は自分の日常の口癖も含めて心理傾向をつかみ、EQを高めるように心がけることが、子どものEQの向上につながっていくのである。