たとえば、2015年9月の関東・東北豪雨で14人の犠牲者を出した「鬼怒川水害」では、被災者ら30人が18年8月、国に3億3500万円の損害賠償を求めて提訴している。

 この時は、利根川水系・鬼怒川の下流域にある茨城県常総市で堤防が決壊し、堤防が未整備だった箇所からの溢水もあって、市の面積の約3分の1が浸水し、全壊が53戸、大規模なものも含め半壊が約5000戸に達した。

 原告弁護団は、「地盤沈下の進行で堤防が低くなり、洪水が起きれば破堤する危険性が高まっていた個所を国は放置し、堤防かさ上げ措置を講じてこなかった瑕疵」、「堤防がないため、洪水が起きれば氾濫する危険性が高かった箇所で、築堤工事を怠った瑕疵」などを指摘している。

 また今年1月には、2018年7月の西日本豪雨で、愛媛県の2つのダムの「緊急放流」で被害を受けた被災者と遺族の計8人が、国などに総額約8600万円の損害賠償を求め、松山地裁に提訴している。

 2つのダムは、肱川(ひじかわ)に建設された国直轄の野村ダム(西予市=せいよし)と鹿野川ダム(大洲市=おおずし)で、国土交通省四国地方整備局が管理している。

 豪雨でダムが満杯になり、流入する雨量とほぼ同じ量を緊急放流したため、川の流量が急にそれまでの6倍にも増えて氾濫。8人が亡くなり、約3500戸が被災した。

 原告側は「事前の放流を十分に行わなかったため、緊急放流が必要になり、被害を拡大させた」などと主張している。

 この水害では、西予市と大洲市が洪水の被害想定や緊急放流の危険性について住民への周知が不十分だったと原告側は主張し、とくに大洲市が緊急放流の情報を住民に伝えたのは実施の5分前であり、これが被害を拡大させたとして、両市にも賠償を求めている。

 さらに4月15日には、18年7月の西日本豪雨では、「小田川氾濫」による大水害で被災した岡山県倉敷市真備町地区などの住民が、国などに損害賠償を求める訴えを岡山地裁に起こした。

 この大水害では、高梁川(たかはしがわ)の支流である小田川の堤防が決壊し、真備町地区の3割が水没して、51人が亡くなった。

 この水害では、小田川の流れを変え、高梁川に合流する地点を現在よりずっと下流にする「付け替え工事」が、約50年前に計画されながら、国土交通省がその工事を実施してこなかった。

 付け替え工事は水害の約1年後の19年6月にようやく始まったが、これがもっと早く実施されていれば、合流地点の水位が約4メートルも下がるので、小田川の氾濫は防げた可能性が高いと考えられている。

 そうした事情を踏まえて弁護団は、「河道付け替え工事を怠った工事着工不作為の責任」などを裁判で問うという。

 これらの訴訟はそれぞれ状況は異なるが、「公の造営物の設置または管理に瑕疵」があったことを問う点では共通する。

 今回の熊本地裁判決は、これらの裁判に取り組んでいる人たちにとって参考にも励ましにもなると思われる。

(ジャーナリスト 岡田幹治)