上場ユニコーンが直面する「見えない天井」

小林:ユニコーンが意識されること自体にはポジティブな側面もありますが、1000億円という数字を目標にし過ぎると、その次の課題になかなか目がいかなくなるケースもあると思います。実際、それまで順調に成長してきた有望な上場企業でも、1000億円のサイズになった後に、急に時価総額の伸びが鈍化するケースも見受けます。

朝倉:グラスシーリング(見えないガラスの天井)がありますよね。

村上:時価総額1000億円のグラスシーリングについては、背景に3つの論点があると思います。1つは、投資家の目から見れば、比較対象となる銘柄に、安定した流動性のある銘柄が増えること。

2つ目は、資金の量。バリュエーションが大きくなればなるほど、大きな資金が動かなければならなくなるので、より大きな資金が入ってくる素地がなければ、それ以上は株価が上がらない。

3つ目は、時価総額が1000億円を超えると、数百億の階段を駆け上がっている時に比べてファンダメンタルな投資家が増え、利益に対する注目度も上がり、PSR(株価売上高倍率)やPER(株価収益率)などの水準が下がってくるということ。

これらの論点が構造的に、このグラスシーリングを形作っているのではないでしょうか。

朝倉:単に、「時価総額1000億円の未上場会社を量産すればいい」との話ではないということですね。ユニコーンという言葉はキャッチーであるが故に、政策目標にはしやすいですが、今話したような課題を残したまま、ただ数だけ増えていくことには怖さもあります。

小林:そうですね。官も民もですが、良くも悪くも、日本は足並みが揃ったときの最適化ぶりには恐るべきものがある。「ユニコーンをつくる」というお題目に過剰最適した結果、ユニコーン群を無理やりつくることになり、そうした企業群の上場後のパフォーマンスが悪かったりすると、「これはなんだったんだ……」ということで、逆に大きな揺り戻しを招きかねません。

そうした事態を防ぐためにも、長期的な視点で会社を捉え、未上場/上場を連続的に見渡し、本質的な議論に立ち戻る必要があるように思います。

朝倉:社会に大きなプラスのインパクトを及ぼす会社をつくっていこう、ということがスタートアップを後押しする本来の趣旨であり、「ユニコーン」はあくまでその代名詞であるはず。それを履き違えて、「とにかく時価総額1000億円以上の未上場企業をつくろう」となってはいけないでしょうね。

*本記事はVoicyの放送を加筆修正し(ライター:代麻理子 編集:正田彩佳)、signifiant style 2020/1/31に掲載した内容です。