敵を見下すことで
自己肯定感を高めるのが本質

 それでは、なぜ人間社会において、偏見や差別が起きてしまうのだろうか。北村氏はこう説明する。

「簡潔に言うと、『人には自分が有利になりたい、偉くなりたい』という心理があるからです。心理学用語では『自尊心』、今のはやり言葉だと『自己肯定感』とも言い換えられます。たとえば、自己肯定感が低い人が、違うタイプの人をけなして、自分のほうが上だと思うことで、相対的に自己肯定感を補うのが一般的なケースといえます」

 社会心理学では、人は味方と敵を分ける心理が働き、自分にとって大切な味方を「内集団」、それ以外の敵を「外集団」と区別するのが基本的な考え方とされる。

 外国人差別はこの典型的なパターン。特にヘイトスピーチの対象となりがちな在日韓国人や中国人は、日本人にとって身近な存在だからこそ敵だと判別されやすく、偏見や差別が頻発するのだ。

 偏見や差別にさらされる対象は、LGBTや障害者などのようにマイノリティー側であることが多い。日本のマイノリティー差別の問題について、北村氏は以下のように指摘する。

「日本は諸外国と比べても、自分たちが社会の中で『普通』の存在だと考えることで安心感を得る人が多い傾向があります。障害者問題、性的マイノリティー問題、民族差別の問題においても、偏見や差別を持つ側がマジョリティーであることに安堵感を抱き、日々の生活を送っています」

 民主主義国の日本では、原理的にあらゆる意見が多数決によって決められることが多く、少数者の意見が黙殺されやすいのも確かだ。

「とはいえ、それでは少数派が常に負け続けることになり、人権的な価値が侵害され、不公正な社会になります。そのような社会にしないためにも、マイノリティーへの配慮が必須なのです」