しかしながら多くの場合、株価はいったん大きく上昇しても、実体の利益が伴わなければそのうち失望売りで下がる。つまり、実際にはそれほどもうかっているわけではないことに誰もが気付き始めるからだ。ソフトバンクGの場合もITバブルが終焉した後、2002年の11月に株価は800円台と大幅に下落した。ところが、2006年に英ボーダフォンを買収して携帯電話事業に乗り出した後は順調に拡大しながら利益を伸ばし、2019年3月期には2兆3539億円という営業利益を挙げている。この20年ほどの間に株式分割を2度行っているので、単純な比較はできないが、株価もそれなりに戻してきている。つまり、実体の利益が伴ってくることで理想買いではなく、現実買いの段階になって再び株価が上がり始めたのだ(直近、ソフトバンクGは大きな赤字を計上したので今後の株価はどうなるかわからないが)。

「恐怖」が生み出す
下落相場のパニック売り

 下がる時も全く同じである。今回のコロナショックを考えてみよう。実際に日米で株価が大きく下落し始めたのは2月下旬からだ。新型コロナウイルスの感染が拡大し始めたのはもっと前からだが、初期の頃はそれほど経済に大きな打撃を与えるとは考えられていなかった。ところが欧米で急速に感染が広がり、都市封鎖という事態が生じてくると、今度は新型ウイルスという得体の知れないものがどこまで広がっていくのかわからないという恐怖心が出てくる。特に、3月に入ってからのパニック売りともいうべき大幅な下落は、そうした投資家の心理を表したものだろう。上昇相場の際に理想買いで大幅に株価が上がるのとは逆の方向だが、同じ心理現象といえるだろう。

 しかしながら、そういうパニック売りはいったんは落ち着く。感染者数や死者数が頭打ちか横ばいになってくる、新しい治療薬の認可が有望になってくる、都市封鎖が少しずつ解除されるといった事象が出てくると、心理的に落ち着きを取り戻すからだ。ところが、現実には経済が受けているダメージは非常に大きい。ニュースの報道を見ても、米国ではJ-クルーやゴールドジムといった日本でもよく知られた企業が破綻している。5月8日に発表された米雇用統計では、4月の非農業部門雇用者数は前月から2050万人減少し、失業率は前月の3倍あまりとなる14.7%に拡大した。実におよそ8人に1人が失業したということになる。

 わが国ではまだそれほど大きな倒産は出てきていないが、東京商工リサーチの調査によれば、5月5日時点のコロナウイルス感染拡大の影響で倒産した企業数は、35都道府県114社とされている。今後もこの数は拡大するだろうと予測されている。