経営者ですら、自己分析を続けている

エッグフォワード代表取締役社長の徳谷智史さん自己分析は、自分がどうありたいか(Will)を自己認知する方法であり、市場価値を図る上でも役に立つものだ。

徳谷 就活生に限らず、いくつになっても、自分がしている仕事の意味・意義を考えたり、さらなる成長を目指すことはとても大事だと思っています。

それには、やっぱり自己を棚下す機会が必要不可欠なんですよね。社会人の自己分析は、自分がどうありたいかを自己認知することに加えて、市場価値を図る上でも役に立ちます。就活生のようにひたすらワークシートをやるだけが自己分析ではないのです。

熊谷 自分の専門性が通用しているうちはいいのですが、世の中の変化とともに、スキルや専門性だけでは通用しなくなると、途端に戦えなくなります。今の自分がどのくらい通用するのか、自分の市場価値を把握しておくことは大切です。

徳谷 おっしゃる通りです。だからこそ、TURNINGPOINTのような第3者にキャリア相談をする機会の必要性が増しています。経営者にコーチングを受けている方が多いのは、まさしく自分の価値を図り、客観視するためです。「エグゼクティブコーチング」と呼ばれますが、自分を知る機会を自ら生み出していますよね。

まさか経営者が自分の部下に、「僕はイケてると思う? 今後どうしたらいいと思う?」なんて聞くわけにはいきませんから(笑)。

熊谷 「それを考えるのが社長の仕事ですよ」と突き放されるでしょうね(笑)。

「ウィンドウズ2000」と
煙たがられる40代

徳谷 TURNINGPOINTで日々キャリアカウンセリングする中で、若手社員に限らず30代40代の中堅社員も仕事のことで深く悩んでいるなと感じています。「今の会社に居続けていいのだろうか」など「上司を見ても自分のビジョンが描けない」など不安を抱えているようです。

熊谷 20代のように若くない分、切実な悩みですよね。

徳谷 一生懸命働いてきたからといって、会社が生涯面倒をみてくれるわけではないですから。50代以上の社員をどんどん減らしている業界があるのもまぎれもない現実です。

熊谷 現実は厳しいですね。

徳谷 デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進による業務の効率化・改善化を企業は進めています。コロナの影響で、その流れはより早まっていますね。

効率化によって生まれた時間を使って、働き方やスキルをチェンジする「リスキル」の動きが広まっています。「リスキル」という耳障りのいい言葉を使っていますが、「現状のスキルなら、あなたはうちの会社にいりません」と言っているようなものです。

40代後半、50代になって「変われないなら、いりません」となれば、転職も視野に入れるでしょう。しかし、市場から同じ待遇で必要とされるかというと、厳しい面もあると思います。

そうなってはじめて「私はこれからどういう道に進みたいんだろうか」と自己分析を始めるのです。そうした自己分析を就活以来20数年間することなく、惰性で働き続けてきた人は、本人の理想とは離れた職種を選ぶしかなくなります。

熊谷 入社イコール安定と思って長い間過ごしていたのに、教育や介護などのお金が必要なときになって急に「この先どうやって稼げばいいのか」という問題に直面するのはきついですね。

徳谷 最近大企業で流行っている「ウィンドウズ2000」という言葉を知っていますか? 成長や進化をしようとせず、会社にぶら下がり続けながら、窓際で年収2000万円近くもらっている、大企業のいわゆる「窓際族」のことを揶揄する言葉のようです。自己分析などとは無縁の「ウィンドウズ2000」の方々です。転職しようにも、年収が半分以下になっても、どこも雇ってくれないでしょうから、会社にぶら下がり続けるしかないんですよ。

熊谷 でも、これからは会社から「サポート終了です」と言われてしまう可能性はありますね。