昨年の先輩たちは
本当に「うらやましい」か?

我究館館長の熊谷智宏さん 熊谷智宏(くまがい・ともひろ)
我究館館長
横浜国立大学を卒業後、(株)リクルートに入社。2009年、(株)ジャパンビジネスラボに参画。現在までに3000人を超える大学生や社会人のキャリアデザイン、就職や転職、キャリアチェンジのサポートをしてきた。難関企業への就・転職の成功だけでなく、MBA留学、医学部編入、起業、資格取得のサポートなど、幅広い領域の支援で圧倒的な実績を出している。また、国内外の大学での講演や、執筆活動も積極的に行っている。著書に「絶対内定」シリーズがある。

熊谷 今の就活生は「昨年の先輩たちがうらやましい」といいます。本当にそうでしょうか。

僕が「売り手市場の弊害」だと思うのは、就活で苦労せず内定を取れたことをいいことに、「転職活動も余裕でいけるんじゃないか」とタカをくくっている学生が多いことです。

徳谷 実際は、転職も本当に厳しいですからね。

熊谷 とりあえず会社に入って、気に入らなければ転職すればいいや、みたいな気持ちで働いている人間が、その会社で活躍できるほど世の中は甘くないですよね。

徳谷 TURNINGPOINTで転職キャリア支援をしていても、転職市場は、新卒と比にならないくらい厳しいですよ。
第二新卒や、社会人2年目までは手応えがあるかもしれませんが、社会人4年目以降は、能力次第では相当ハードルが上がっていると考えたほうがいいです。

たとえば、実力に対してインフレを起こしている業界は、商社。待遇がとても良いので、転職するとほぼ年収は下がります。

金融機関も長くいるほど潰しがききにくくなり30歳を超えると、さらに転職ハードル上がります。メーカーも、経験値が偏っているとフレキシブルに動けず、同じような仕事に出会えなければ、転職活動は苦戦しやすい。

加えて、30代になるとポテンシャル採用はない、と思ってください。ポテンシャルがあった上で、「じゃあ、今のあなたは弊社で何ができるのですか」と、即戦力を問われるはずです。

熊谷 シビアですよね。だからこそ、「転職が当たり前」というフレーズだけ切り取って安心材料にするのは早計です。「この会社は違う。転職だ」と思っても、書類選考すら突破できない、となるとどうでしょうか。

自分の専門性が通用しない、そもそも専門性も身についていなかったことに気づいて、必要以上に傷ついて、会社にしがみつくしかないというマインドになってしまいます。それだと、長い会社員生活が悲劇になる気がしてなりません。