「マスクバブル」の崩壊は本当にコロナ収束の兆しなのか新大久保の商店街などで、これまで手に入りにくかったマスクの価格が顕著に下がり始めた。この状況は何を意味するのか Photo:Etsuo Hara/gettyimages

大久保駅の商店街で起き始めた
「マスクバブル」の崩壊

 私の仕事場からほど近い、新大久保の商店街で「マスクバブル」が崩壊し始めました。先週までは50枚入りのマスク一箱が3500円の水準だったのに、5月13日の朝に確認してみると、新大久保駅近くの一番手広くやっているお店では4層構造のものが1箱2200円、3層構造が2000円まで値下がりしていました。駅から離れるにつれて相場も下がり、一番離れたお店では1580円でした。

「マスクバブルが崩壊したから、もうすぐコロナも収束しそうだね」と友人が言いました。そこで私は、未来予測の専門家として、マジ顔で答えました。

「それは因果関係としては正しくないが、未来予測としては正しいよ」

 いったいなぜ、マスクバブルが崩壊することでコロナの収束が予測できるのか、一見論理的には見えないけれど実は論理的に正しい、という話をしたいと思います。

 まず、マスクバブルが崩壊した理由は何でしょう。政治家が「アベノマスクの成果が出てきた」と高らかにツイートしています。家庭にマスクが出回ったから高値の転売ヤーの市場が崩壊したという永田町の論理なのですが、1ミリくらいはその効果があったかもしれないけれど、因果関係としては正しくないと思います。

 理由は、厚生労働省の「布製マスクの都道府県別配布状況」を見ればわかります。先週段階で「配布中」表示は東京都だけ。ようやく最近、大阪府と福岡県が配布中となり、埼玉県、千葉県、神奈川県も発送は5月14日から。大半の都道府県はまだ準備中です。家庭に届いていないものがバブル価格を崩壊させるというのは、ちょっと論理の飛躍でしょう。

 マスクバブル崩壊の最大の理由は、発注と生産のタイムラグです。これは若いコンサルタントが、「経済ゲーム」と呼ばれる研修で体験学習することが多い経済現象の1つです。ある商品が急に人気が出て市場で品薄になったとして、小売店、卸、メーカー役それぞれが1週間ごとに発注と生産拡大を繰り返したらどういうことが起きるのかという、シミュレーションをするのです。