9億5600万円とした鑑定評価書の末尾に
「意見価額1億3400万円」が付記された
近畿財務局は売却に向けた鑑定評価を依頼する際、地中に埋まったごみの撤去にかかる費用として地下埋設物撤去概算額、そして軟弱地盤であることを反映するよう仕様書に盛り込んだ。要は、地下埋設物撤去概算額などを考慮して鑑定評価額を下げるよう求めたのである。
16年4月に近畿財務局から依頼を受けた不動産鑑定業者は、翌5月に鑑定評価書を発行した。地下埋設物の問題を除外して鑑定評価額を9億5600万円とした。依頼者が提示した地下埋設物撤去概算額には依頼者側の推測に基づくものが含まれ、調査方法が不動産鑑定評価においては不適当、つまり信用性に欠けると判断した。なにしろ約8億円という過大な額である。
でありながら、鑑定評価書の末尾に付記意見として、意見価額1億3400万円と記した。これは地下埋設物撤去概算額を差し引いた価格である。
不動産鑑定士業界では、依頼を受けて鑑定評価書に付記を書くこともあるが、1つの鑑定評価書に2つの価額を記すことは望ましくないとされる。鑑定評価書に記載した価格である以上、意見価額が独り歩きする場合があるからだ。
鑑定評価書の利用者にとっては価格が最大の関心事であり、それが鑑定評価額なのか意見価額なのかといった詳細な部分には注意が払われにくい。実際、翌6月に近畿財務局は意見価額1億3400万円と同額で土地を森友学園に売却した。
意見価額の記載がなければ、近畿財務局は売却額を1億3400万円とする根拠を得られなかった。調査報告書は、意見価額は価格決定に「『利用』されたと考えられる」としている。 一般的ではないが、依頼者の要望を反映させた意見価額をあえて付記してもらうというのが、額にして8億円の値引きを可能にしたトリックである。
次に、買い取り直後に不動産評価を購入額の10倍にする方法である。