本書『地域も自分もガチで変える!逆転人生の糸島ブランド戦略』では、福岡県糸島市における地方創生への戦略と、具体的な取り組みを紹介している。

 著者の岡祐輔氏は、糸島市企画部秘書広報課の現役公務員。九州大学学術研究・産学連携本部出向中に、同大学大学院でMBAを取得。2016年に帰任後、シティセールス課ブランド推進係に配属され、新たな「糸島ブランド」作りに取り組んできた。

 岡氏は、糸島市のブランド作りにあたり、大学院で学んだ経営学の手法を活用。糸島市の現状を詳細に分析し、さらなる発展への課題を見つけることから始める。そしてそれらを解消する戦略を立案していったのだ。

 その戦略を、さまざまな困難を乗り越えながら実行。いくつもの新たな糸島ブランドを打ち出すことに成功した。

 その功績から「内閣府地方創生☆政策アイデアコンテスト・地方創生担当大臣賞」など、さまざまなアワードを受賞した。今、もっとも注目されている地方公務員の一人である。

すでにでき上がりつつあった
「糸島ブランド」

 糸島市は、2010年1月1日に1市2町が合併して誕生した。福岡県最西端の糸島半島に位置する、自然豊かで美しい田園地帯である。市の北側は玄界灘に面した海岸線が広がり、南側は1000メートル弱の山々が連なる。

 一方、福岡市中心部から電車、車ともに30分ほどの距離で、博多駅や福岡空港にも直接アクセスできる。田舎の良さと、都市部の利便性を兼ね備えた土地なのだ。

 市が誕生して以来、観光客の数は年々増え続けている。豊かな自然と食が魅力となった。2018年には、2010年の1.5倍、年間682万人の観光客が訪れた。

 例えば、観光の目玉の一つに「カキ小屋」がある。複数の漁港の近くに立ち並ぶ、地元の漁師直営の「カキ小屋」では、新鮮な「糸島カキ」を求めて、冬の半年足らずの間に50万人以上の観光客が訪れる。

 また、JA糸島が運営する産地直接販売施設「伊都菜彩」は年間135万人が利用。農家や漁師の直売施設としては日本一の、40億円超の売り上げを誇る。

 さらに、市の人口は2010年以来しばらく減少が続いたが、2016年を底に急増に転じている。

 これは、子育て世代を増やす施策として導入された「マイホーム取得奨励金」「空き家バンク」「子育て世代応援サイト」開設などの取り組みの成果だという。

 岡氏がブランド推進係に配属されたのは2016年であり、その頃にもすでにある程度、観光客や移住者向けの「糸島ブランド」はでき上がってきていたといえる。

 だが、岡氏は、さまざまなデータを分析した結果、それまでの糸島ブランドを維持し、さらに発展させていくには問題があることを発見した。