持ち株会社化して5年たつキリンホールディングス(HD)が、もう一つ“持ち株会社”をつくる。
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キリンHDは2013年1月に新会社「キリン株式会社」を同社の下に設立する。現在、キリンHDの傘下にある国内主力事業会社のキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンを、キリン株式会社の傘下にくくり直す。3社には製造、マーケティング、営業部隊のみを残し、残りは新会社に移行する計画という。上場会社であるキリンHDは、オーストラリアのライオン、ブラジルのスキンカリオールなどの海外事業子会社の統括および運営管理に専念し、国内飲料事業の統括はキリン株式会社が担当する。
今回の改組をキリンHDは、現在事業会社3社に分かれているブランド管理や企画などの機能を一元化し、ブランドの強化を図るためと説明する。だが、最大の理由は国内事業の不振にある。
12年第2四半期決算では、国内酒類事業、国内飲料事業はそろって前年同期比減収。特に国内酒類事業は、これまでの稼ぎ頭であった新ジャンルやノンアルコールビールが苦戦し、売上高で通期目標を150億円、営業利益で85億円下方修正した。国内飲料事業は、緑茶やコーヒーなど主力カテゴリーでシェアを落とし、業界5位に転落した。
ここ数年海外での企業買収に傾倒してきたキリンHDは、国内事業の強化が手薄になっていた。持ち株会社としての機能を十分に果たせていなかったのだ。
ライバルのアサヒグループホールディングスがカルピス買収など国内でも攻勢をかける中、新体制が出遅れを取り戻すためには、キリンHDではできなかった迅速な意思決定と機動力が不可欠だ。現段階では3会社に残す予定のマーケティング機能の統合も、場合によっては必要になるかもしれない。
キリンHDがすべきことは、小手先の組織再編ではない。今回の改組で本質的にグループ戦略を強化できなければ、屋下に屋を架しただけに終わることになるだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 鈴木洋子)