コロナ禍で大量失業者を出しても、日本の観光業の未来が明るいワケ「日本の観光はもうダメなのではないか」と落胆する必要は、全くない(写真はイメージです) Photo:PIXTA

失業者の3分の1を出した
観光業は回復できるのか

 コロナショックが観光業を直撃している。

 6月2日、厚生労働省が新型コロナの影響で解雇や雇い止めに遭った人たちの数をまとめたところ、3万214事業所において1万6723人(5月29日現在)となった。その中で最も多いのが3702人の宿泊業、次いで2287人の旅客運送業となっている。つまり、失業者の3分の1が観光業から出ているのだ。

 という話を聞くと、「観光立国などといって、不安定な産業に力を入れてきた日本政府の責任だ!」と、またしても安倍政権批判へと話を持っていきたがる人もいるだろうが、その認識はちょっと誤解があるかもしれない。確かに、今は多くの失業者が出ているものの、そう遠くない将来、必ず雇用は復活する。この苦しい時代の中でも、日本の観光業の未来は明るいのだ。

 なぜ、そんなことが断言できるのかというと、観光というのは、製造業などと比べるとかなりレジリエンス力(回復力)が強い産業だからだ。

 UNWTO(世界観光機関)によれば、世界の国際観光客到着数はこの25年間、ずっと右肩上がりで増え続けている。国際観光収入も同様で、リーマンショック後の2009年からやや落ちたものの、ほどなく回復して、きれいな成長基調を描いている。つまり観光というのは、世界的な経済危機や国際的な紛争、あるいは膨大な数の人が犠牲になる未曾有の災害などが発生しても、それらの影響をほとんど受けることなく、安定的に成長できる産業ということだ。

 では、なぜこうも危機に強いのかというと、客の激減も早いが「戻り」も早いからだ。

 GDPの2割が観光を占めるタイがわかりやすい。2004年末、22万人が亡くなったスマトラ沖地震が発生したタイでも、多数の外国人観光客を含む8000人以上が亡くなった。むろん、観光業は大打撃を被った。独立行政法人労働政策研究・研修機構の当時のレポートによれば、2005年2月時点で、プーケットなど3県でのホテルの客室稼働率は10%程度まで低下し、50万人の従業員が失業する見込みだった。