SNS上の記事の約6割は読んでいない人が拡散!?
短絡的に人の「本質」を決めつける人々

 本書には、「ソーシャルメディア上で共有されている記事の59%が、記事を読んでもいない人によって拡散されている」というデータが紹介されている。

 これは、ネットで情報収集をよくしている人なら、うなずけるのではないだろうか。私も、SNSやネットニュースのコメントを閲覧することが多い。そこでしばしば見かけるのが、どう考えても見出しだけ、ひどい時には写真だけを見たと思われる、とんちんかんなコメントだ。記事の主張を正反対に捉えて批判や非難をしたり、まるで関係のない話題を出して記事の筆者や取り上げられている人物を叩いたりしている。

 一部の人ではあるが、彼らはなぜそんなに焦っているのだろうか。

 リンク先の記事を読むのさえ面倒に思うような「短絡的に物事を判断してしまう傾向」が「本質」に関わると、少々厄介な問題を引き起こすことがある。特に、ある集団の人間の「本質」をエビデンスもなく判断することが、人種や民族、国籍などによる「差別」の問題に行き着くのだ。

 物事の本質を見ることの重要性は、数多のビジネス書などでも指摘されている。だが、本来、本質を見きわめるのは、簡単ではない。古今東西の諸科学が、これまで本質らしきものをつかむのに、どれだけ苦労して実験や調査を重ね、議論を尽くしてきたことか。

 本書は、本質を検証することなく短絡的に捉えることによる、「真のスコットランド人の誤謬」と呼ばれる論理ミスを紹介している。こんな架空のエピソードが元になっている。

 あるスコットランド人が新聞を読んでいると、イングランド人が酷い性犯罪を引き起こしたという記事が目に留まる。そこで彼は「スコットランド人にそんなことをする者はいない」と言う。そして翌朝、そのスコットランド人が同じ新聞を眺めると、今度はスコットランド人が、前日の記事よりさらに過酷な犯罪をしでかしたという記事が載っていた。しかし、そのスコットランド人は、自分の誤りを訂正しない。その代わりに、「真のスコットランド人にそのようなことをする者はいない」と言い放ったのだ。

 この話の主人公が判断した「スコットランド人の本質」は、単なる「思い込み」にすぎない。しかし、それに反する事実が判明したとしても、その思い込みに固執し、例外を排除する。こうなってしまうと、ある意味「最強」だろう。スコットランド人がどんなに、彼の思い込みに反する行動をしたとしても、すべて「例外」として処理されてしまうのだから。