地下鉄の駅はものすごい渡部史絵氏著『地下鉄の駅はものすごい』(平凡社新書)

 こうした苦難の道のりで開通した大江戸線と、オイルショックの影響を受けた新宿線の駅はコスト削減のため、それまでの都営地下鉄の駅とは異なり、苦労が垣間見られる。

 新宿線は、岩本町駅が二面四線から二面三線に計画変更となったほか、東京メトロ・半蔵門線と共同によって建設された九段下駅は、のちに壁を取り払い有名になった。

 建設当初から経費節減で、簡素な壁で仕切っていたことによるところが大きいのだろう。

 あまり話題とならないが、住吉駅も建設当初から半蔵門線部分を準備していたほか、森下駅も大江戸線部分を準備して建設されていた。

 最初から準備することで、経費節減につながったわけである。このほか、出入口を近隣ビルなどと接続することで建設費用を抑えている。

 大江戸線では、さらに掘削費用を抑えるため、建設用の縦構を乗客用通路などに転用する工夫がなされている。大江戸線の駅で、一気に改札階まで接続するエスカレーターや階段が
少ないのは、縦構を利用したのが起因している。

 ただし、バリアフリー対策として、建設時よりエレベーターが完備されている。

大江戸線六本木駅が
日本一深くなったワケ

 日本一深い場所にある駅と言われると、古くはJR総武線の馬喰町駅が思い起こされ、標高の高い駅はJR小海線の野辺山駅だが、現在日本一深い場所にある駅と言えば、大江戸線の六本木駅である。

 先に開業した東京メトロ・日比谷線の六本木駅は、浅い位置にホームを構えている。

 後発の大江戸線は、この日比谷線を避けて建設したわけであるが、日比谷線を避けただけでは日本一になることはなかった。

 大江戸線・六本木駅を建設するにあたり、日比谷線以外に東京電力の洞道(とうどう、地下に設けたトンネル)と大型の電力施設があり、これらも避けなければならなかった。

 日比谷線の六本木駅は、幅員のある六本木通り地下に駅を設けたが、大江戸線は六本木交差点で交差する外苑東通り地下に駅を建設することになった。交通量の多く幅員の狭い通りの直下であることから、用地が多く必要になる開削工法は断念され、シールド掘削工法による駅建設となった。

 特に麻布十番駅寄りの芋洗坂の通りは道路幅員が狭いため、上下にシールドマシンを使用することになり、駅建設部分は世界初となる4心円による工法が行われた。通常のシールドマシンは、円形に削掘するため、トンネル上部に不要な空間ができるが、4心円は必要な部分だけを掘ることができる。

 この上下の間隔は3mもあることから、深度も含めてかなり難しい工事であったことは容易に想像がつく。

 地上部からは想像もつかないうちに完成した六本木駅は、土地柄、金色と黒色を使用したゴージャスな駅と感じていたが、管楽器を表現した真鍮色の金属的なイメージでデザインされている。

 ベンチや、現在消えゆく公衆電話台もこの駅用にデザインされた。「ゆとりの空間」にある黒御影石に描かれた作品とともに、利用した際にはぜひ楽しんでもらいたい。

※本文は筆者の書籍『地下鉄の駅はものすごい』の中から抜粋して掲載しています。