北朝鮮による拉致被害者である横田めぐみさんの父親である横田滋さんが6月5日、亡くなった。拉致問題は長年の懸案であり、第2次安倍政権だけの責任ではない。ただ、現在の膠着状態は安倍晋三という政治家の言動に重大な責任がある。そしてその当時の言動は、大衆迎合的でご都合主義な現在の安倍首相の言動の原点といっても過言ではないのだ。(立命館大学政策科学部教授 上久保誠人)
北朝鮮による拉致問題の膠着は
安倍首相の過去の言動に重大な責任
6月5日、北朝鮮によって拉致された横田めぐみさんの父・横田滋さんが亡くなった。安倍晋三首相は参議院本会議の答弁で「横田滋さんがご存命の間にめぐみさんとの再会を実現できなかったことは断腸の思いであり、まことに申し訳なく思っている」と述べた。
安倍首相は続けて、「安倍内閣で拉致問題を解決するとの決意はまったく変わりない」と、北朝鮮拉致問題の解決に取り組む考えを強調した。しかし、第2次安倍政権で拉致問題はまったくといっていいほど進展していない。
ドナルド・トランプ米大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長の間で史上初の「米朝首脳会談」が開催され、朝鮮半島の融和ムードが高まった時には、安倍首相が日朝首脳会談の実現に意欲を見せたことがあった(本連載第181回)。しかし、結局それ以降、首相は何の動きも起こしていない。
拉致問題は長年の政治課題であり、第2次安倍政権だけの責任ではない。だが、安倍首相がいつものように「うまくいくのは安倍政権の成果、うまくいかないものは民主党政権の責任」の「民主党政権悪夢論」で片付けることはできない。そもそも拉致問題の膠着は、安倍晋三という政治家の言動に重大な責任があるからだ。