6月末、政府の日本のエネルギー・環境会議は、日本が戦略的に目指す2030年の電源構成として3つのエネルギー選択肢を示した。この選択肢は、2030年の電力発電量に占める原子力の割合により、1.ゼロ、2.15%、3.20~25%とされている。しかし、この3つの選択肢には、いずれも矛盾・問題点が多い。まずは、この矛盾と問題点について整理したい。
「選択肢」は反経済
一つは、経済成長とエネルギー政策との整合性がとれていないという点である。選択肢の前提条件として用いたGDPと、政府の掲げる日本再生のための成長戦略の目標値の間に大きな差がある。
選択肢の前提として発電電力量を求める際、2010年代1.1%、2020年代0.8%の実質GDP成長率のもとに計算されている。この数値は、日本再生のために掲げられている政府の成長戦略の目標値名目成長率3%程度、実質成長率2%程度(2020年度までの平均)から大きくかけ離れている。これでは、エネルギーの制約のために成長が制限されることにもなりかねない。
次ページの図1を見てみよう。選択肢の参照ケースにおけるGDPと発電電力量の関係を示している。GDP成長率と発電電力量の関係について、政府が自ら想定するベースラインの「参照ケース」では、「GDPは上昇するが、発電電力量はほとんど横ばいとされ、過去の実績とは全く乖離した相関関係が仮定されているのだ。