6月末、政府の日本のエネルギー・環境会議は、日本が戦略的に目指す2030年の電源構成として3つのエネルギー選択肢を示した。この選択肢は、2030年の電力発電量に占める原子力の割合により、1.ゼロ、2.15%、3.20~25%とされている。しかし、この3つの選択肢には、いずれも矛盾・問題点が多い。まずは、この矛盾と問題点について整理したい。

さわ・あきひろ/1981年一橋大学経済学部卒業・通商産業省入省。1987年行政学修士(プリンストン大学)、1997年工業技術院人事課長、2001年環境政策課長、 2003年資源エネルギー庁資源燃料部政策課長。2004年8月~2008年7月東京大学先端科学技術研究センター教授。2007年5月より現職。著書に『エコ亡国論』(新潮新書)、21世紀政策研究所の提言書として『難航する地球温暖化国際交渉の打開に向けて』、『温室効果ガス1990年比25%削減の経済影響 ~地域経済・所得分配への影響分析~』『精神論ぬきの電力入門』(新潮新書)など多数。

「選択肢」は反経済

 一つは、経済成長とエネルギー政策との整合性がとれていないという点である。選択肢の前提条件として用いたGDPと、政府の掲げる日本再生のための成長戦略の目標値の間に大きな差がある。

 選択肢の前提として発電電力量を求める際、2010年代1.1%、2020年代0.8%の実質GDP成長率のもとに計算されている。この数値は、日本再生のために掲げられている政府の成長戦略の目標値名目成長率3%程度、実質成長率2%程度(2020年度までの平均)から大きくかけ離れている。これでは、エネルギーの制約のために成長が制限されることにもなりかねない。

 次ページの図1を見てみよう。選択肢の参照ケースにおけるGDPと発電電力量の関係を示している。GDP成長率と発電電力量の関係について、政府が自ら想定するベースラインの「参照ケース」では、「GDPは上昇するが、発電電力量はほとんど横ばいとされ、過去の実績とは全く乖離した相関関係が仮定されているのだ。