人間だけではなく、家畜の数も増えた。現在、地球上の陸地の36%が牧草・放牧地・耕地であり、牛は15億頭、ヒツジとヤギはそれぞれ12億頭、ブタは10億頭、ニワトリは500億羽もいる。

 人間に近縁なチンパンジーが30万頭、ゴリラが20万頭ほどしか生き残っていないことに比べると、想像を絶する数の家畜が陸地を覆いつくしている。

 実に陸上動物のバイオマス(生物体量)の9割以上が人間と家畜なのだ。

 その食料を賄うために毎年大規模に森林が伐採され、耕地や牧草地に変わっていく。これはウイルスが増える絶好の温床になる。

 新型コロナウイルスもコウモリ由来で、中国の武漢の市場で売られていたセンザンコウを介して人間に感染したといわれている。

エボラやエイズよりしたたか
グローバル社会に適応したコロナ

 長年アフリカの奥地でゴリラの調査をしてきた私は、まったく違う性質を持つ2つのウイルス感染症に出合った。感染力も致死性も高いエボラ出血熱と、感染力は低いが着実に死へと誘うエイズである。

 エボラは血液、体液、排せつ物などの直接、間接の接触により、7~10日の潜伏期を経て発症する。嘔吐や高熱、出血が起こり、致死率は80%に達する。

 熱帯雨林地域で何度も起こり、ゴリラやチンパンジーがかかって地域的に消滅した。いくつかの村で発生し、そのたびに人々が隔離されて家屋は焼き払われた。

 一方、エイズは性交渉や授乳などの体液との接触を介して起こり、事故で血液に触れたり、注射器を回し打ちしたりすることによっても感染する。潜伏期間は半年から15年と長いが、徐々に免疫系が弱りさまざまな病気の合併症を起こして死に至る。

 私の調査の片腕だったアシスタントや、隣人の研究者夫婦もエイズで亡くなった。研究者の奥さんが看護師で、診療所で感染して夫に移ったらしい。

 エボラもエイズも熱帯雨林の動物が感染源で、類人猿も宿主になる。エボラは潜伏期が比較的短いので拡散が抑えられていたが、20世紀の終わり頃から伐採道路が走り、都市との行き来が頻繁になってパンデミックが発生した。

 最近ようやく治療薬やワクチンが開発され始めた。エイズは潜伏期が長いので世界中に広がり、多くの有名人が感染した。発症を抑える薬はできたが、いまだに有効なワクチンはできていない。

 社会に影響を与えたのは、感染者との関わりである。