年間100回以上、受講者数3万人を教えてきた企業研修や講演の中から、リーダーの悩みをピックアップ。内容によっては、「本当にこんなことが起きているの?」「ウチの会社ではこんなレベルの低いことは起きていないよ」と思うこともあるかもしれません。しかし、これらはすべて、実際に現場のリーダーが抱えている問題なのです。

自分の意識を変えるのでさえ難しいのですから、部下の意識を変えさせるのはもっと難しいもの。そこで、新刊どう伝えればわかってもらえるのか? 部下に届く 言葉がけの正解から、シーン別にNG行動・発言とOK行動・発言を対比させながらどのような言動で接したらいいかを紹介していきます。

リーダーの不正解:意見を出しやすい雰囲気にする
リーダーの正解:奇抜な意見を求める

リーダーの悩み:会議で意見を言わない部下に積極的に参加してもらいたい

 ここでは、ブレインストーミング会議についてお話しします。

 ブレインストーミングとは、集団でアイデアを出す会議です。既存の枠にとらわれず革新的なアイデアを出すために有効な手法と考えられています。略語で「ブレスト」とも呼ばれています。

 グローバルに展開しているメーカーの生産管理部のリーダーAさんは、ブレスト会議を開いても「入社2年目の部下Hさんや新人のIさんが自分の意見を言わない」と悩んでいました。

 先日も業務改善に関するブレスト会議を開いたのですが、やはりベテランのCさんやEさんばかりがずっと意見を出していました。

 Aさんからすると、CさんやEさんは経験も知識も豊富で普段から業務改善を強く意識しているので、意見は参考になり、助かります。しかし、HさんやIさんのような若手の新鮮な意見も聞きたいものです。

 その一方で若手メンバーは、稚拙な意見だと「もっとよく考えて」と言われるのではないかと恐れているのかもしれません。

 リーダーAさんは気を使って、
「遠慮しないで何でも自由に言っていいよ」(×)
とHさんやIさんに伝えますが、「大丈夫です」としか言いません。

 どのようにすれば、もっと若手部下が積極的に発言するようになるでしょうか。

…>リーダーの反応が大事

 もちろん若手部下でも積極的に意見を言える人はいますが、否定されると意見を言えないという人も多くいます。

 ブレスト会議では、できるだけ多くの意見を出し合うことを優先するため、出した人の意見を否定しないルールを設けることがあります。

 しかし、出した人の意見が明らかに的外れであったり、根拠が甘かったりした場合、無意識に否定してしまうこともあるでしょう。「えっ、何この意見?」などと疑問に思ったとき、つい顔に出てしまいます。

 リーダーが、意見を出しやすいようにしようとどんなに気を使っても、誰かが顔に出してしまっては、「やはり言わなきゃよかった」と思う部下も出てきます。

 そうならないように、リーダーは「その観点は気づかなかったな」「そういう考え方も面白いね」という反応を最初にするようにしましょう。部下の出した意見を受け止めるのです。

…>空気を率先して壊していく

 しかし、それでも意見が言えない部下がいます。

 リーダー以外の人の顔色まで気にしてしまうのです。

 全員が納得してくれないとダメだと考えてしまう、空気を読みすぎる部下がそうです。
必要以上に気を使いすぎてしまっているのです。

 決して部下が悪いわけではありません。「最近の若者は積極性に欠ける」というのは間違いです。

 むしろ、若手メンバーはアイデアは豊富で言いたいことはあるのです。言っていいと言われても建前だと感じているのです。

 ですから、ここは部下が意見を出してきたとき、
「ブレスト会議では奇抜な意見こそ欲しいんだよ」(○)
と言い続けることです。リーダーAさんがこのように伝えることで、他のメンバーも積極的に意見を出すようになりました。

 結果、ベテランでは気づけない業務改善のノウハウが見つかるようになったのです。

 リーダーは奇抜な意見を出した本人を賞賛し、同時に意見を否定する人から守る必要があります。

 そうすることで、意見が活発に出てくるようになり、新しいアイデアも生まれてきます。空気を読まなくていいと率先して壊していくのです。

【ポイント】
「奇抜な意見を出していいよ」と「許可」するのではなく、「要望」する