「この本が読まれるべき理由」をどこまで伝えられるか? という挑戦を始めます。

『だから、この本。』は、ダイヤモンド社の書籍編集局が新たに制作する、自社の書籍を紹介する連載企画です。こうしたコンテンツをつくることになった理由を少しだけお話しさせてください。

「一万円選書」が教えてくれたこと

 「一万円選書」というサービスをご存じでしょうか。

 北海道砂川市のいわた書店さんが始めたもので、忙しくて本屋に行けない、最近同じような本ばかりで出会いがない、という人のために、お薦めの本を約1万円分選んで届けくれる仕組みです。2018年にはNHK「プロフェッショナル仕事の流儀」でも紹介され、現在もたいへん好評とのこと。

 「一万円選書」の成功は、多くの出版関係者を勇気づけました。いまは本が売れない時代だと言われていますが、決して「本そのもの」にニーズがなくなったわけではないことを、明らかにしてくれたからです。

 なくなったのは、読者となる人が書店に行く「時間」であり、新しい本と出会う「機会」であり、たくさんの本の中から1冊を選ぶ「理由」なのです。

 本はいまでも最高のコンテンツであり、書店に行ってじっくり見てくれさえすれば、多くの人が本を買ってくれる――出版社の人間であれば、そう確信しているはずです。実際、コロナ下では開業している書店に多くの方が訪れ、本を買ってくださいました。

 無料の情報が膨大にある現在でも、本が持つ価値はまったく損なわれていません。むしろ人々の生活が忙しくなり時間的な余裕がなくなるほど、良書についての情報は強く求められていると感じます。

「選ばれる理由」を自分たちでつくる

 問題は、これだけ社会生活のスピードが上がり、ネットやSNSの影響で人々の時間が相対的になくなったいまでも、本の魅力を伝えるべき出版社が、書店というメディアに頼り切りだということ。

 とくにネットやSNSが使用される時間の増え方を考えれば、そこでの活動は、いまや書店での露出と同じくらい重要になったといえるでしょう。しかし、ほとんどの出版社は、そうした変化に対応できていません。ネット普及以前の新聞の書評や広告のように、多くの人に、新しい本に出会う機会や購入する理由を提供するものを、いまだに発明できていないのです。

 私たち(ダイヤモンド社書籍編集局)は、かねてより「書籍オンライン」というメディアを運営し、本の魅力を伝えようとしてきました。しかしそれでも、やるべきことを10分の1もやれていないと感じています。

 『だから、この本。』は、そうした認識と反省のうえでスタートする連載です。

 編集部による著者インタビューが中心ですから、それほど珍しくないコンテンツに見えるかもしれません。しかしこの形式は、本が「選ばれる理由」を言語化するという目的においては、少なからぬ意味を持ちます。

 本を担当する編集者の強みは、誰よりも著者に近く、信頼関係があること。シンプルにその強みを活かし、さまざまな質問を著者に投げかけていきます。

 「なぜ、この本を書こうと思ったのか?」
 「最も伝えたいことは何か?」
 「どんな人に読んでもらいたいか?」
 「本が完成するまでの苦労話や制作秘話は?」
 「なぜ今、読むべきなのか?」

 などなど。これらへの回答は、そのまま読者の皆さんが「この本」を選んでいただく理由になるはずです。

 なお、この連載は、私たちが信頼を寄せるライターの方々に執筆をお願いしています。彼ら彼女らによって引き出された著者からの回答は、人間的な魅力が伝わる「声」のようになっているはずです。そうした一面もあわせて、『だから、この本。』と思っていただければ幸いです。

 今後、連載記事はこちらにストックしていきますので、随時ご確認ください。

「この本が読まれるべき理由」をどこまで伝えられるか? という挑戦を始めます。