常に時代背景とセット
だから、常に時代背景とセットにして考えなければいけない。
そこで、『哲学と宗教全史』でチャレンジしたことは、哲学と宗教のまるごと「全史」。
歴史の流れを背景にして哲学とか宗教を理解してみようと試みたわけです。
男性:わかりました。
ただ、昔のブッダの仏典などを読んだだけでは難しい言葉ばかりで、理解できません。そういうときはどうしたらいいでしょうか。
わからない名著はない
出口:これは僕の先生がいった言葉です。
「わからないことを書いている、わからない名著はない」
なぜかといえば、本当に物事の本質をわかっている人はわかりやすく書けるはずだし、あえて難しい言葉を使っているのはただカッコをつけているだけだと思うからです。
その先生は、高坂正堯(こうさか・まさたか、1934~1996)先生です。
「読んでわからないものは読む価値がない」
といつもはっきりいわれていました。
古典のほとんどは翻訳技術の問題もありますが、一度読んで難しいと思った古典でも、今は読みやすい新しい翻訳がどんどん出ていますね。
新旧でいろいろ読み比べてみると、ケインズ(1883~1946)は文章が難しい、アダム・スミス(1723~1790)は本当にやさしいなど著者の文章の癖はありますが、基本、長く読み継がれている古典でわからない名著はないと思います。
ただ、禅の本などは読みにくいですが、それもある程度は仕方がないと割り切るしかないですね。
男性:どうもありがとうございました。
続きは次回にしましょう。
過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。