上場企業全体を対象とした倒産危険度ランキングに加えて、新型コロナウイルスの感染拡大で、甚大な打撃が避けられない13業種について、それぞれ業種別のランキングを作成した。特集『大失業時代の倒産危険度ランキング』(全29回)の#7では、インバウンド関連業界を取り上げる。10社が危険水域に入った。(ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
大手航空会社2社のうち
危険水域に入ったのはどっち?
ANAホールディングス(HD)の片野坂真哉社長は、6月29日の株主総会で「金融機関からの借入金や融資枠で1兆0350億円を確保している」と強調した。同様に、日本航空の赤坂祐二社長も6月19日の株主総会で「5000億円を確保している」と発言した。
新型コロナウイルス感染抑制のために外国からの入国が実質禁止となり、外国人観光客はほとんどゼロになった。インバウンド需要は一瞬にして消滅。国内でも外出自粛や都道府県をまたぐ移動の自粛などで、人の動きが止まった。航空路線は国際線、国内線共に乗客が激減し、両社とも大幅な減便を余儀なくされた。
収入が大幅に減った場合、会社を存続させるためにはまずは資金繰りのめどを付けることが必要だ。そこで、トップが資金繰りに問題がないことをはっきり示すために、株主総会の場で資金確保を明言したのだ。
インバウンド需要の消滅や国内の観光客の激減で、業況が急速に悪化したのは、ホテル業界も同じだ。
帝国データバンクによると、ホテル・旅館の新型コロナウイルス関連倒産は7月2日時点で45件。WBFホテル&リゾーツ(大阪府)、ロイヤルオークリゾート(滋賀県)、ファーストキャビン(東京都)などが倒産している。
業種別では飲食店に次いで2番目に多く、“コロナ倒産”が目立った業種の一つであるといえるだろう。
そもそもホテル市場はコロナ危機以前から供給過剰に陥っていた。海外からの訪日観光客拡大によるインバウンド需要増加を当て込んで近年、新規のホテル開業が相次いだからだ。
しかし、コロナ危機で外国人観光客はいなくなった。外出と移動の自粛で日本人客もほとんど来なくなり、少なからぬホテルが休業に追い込まれた。
今回は、ホテル会社、エアラインなどインバウンド関連会社を倒産危険度で分析し、ランキングを作成した。
1位となったのは鴨川グランドホテル。主力の鴨川グランドホテル(千葉県鴨川市)を2018年に大規模改修工事のため長期閉館し、19年3月に全面リニューアルオープンした。19年3月期は、同ホテルの休館で4億2400万円の営業赤字に転落したが、20年3月期は、再び黒字への回復を見込んでいた。
しかし、リニューアルの半年後、台風15号と台風19号に見舞われた。その傷も癒えないうちにさらに半年後、今度はコロナ禍が直撃した。20年3月期は、結局4800万円の営業赤字を計上することになった。