調味料は最小限。
おいしい料理はシンプルにできている
加藤 先日、この本に載っていた「豚肉のポン酢炒め」にものすごくハマりました。牛肉でやってみたんですが、ご飯が進みすぎて大変なことに。これ、調味料がポン酢1本だけなんですよね。お料理ってそんなに大変じゃないなって思えるのがすばらしいなと思いました。小竹さんのレシピは調味料がすべてシンプルですよね。
小竹 調味料が使われず冷蔵庫のポケットにたくさん入っているのがイヤなんです。賞味期限が切れてさようなら、と地球に悪いこともしたくないですし。だから最小限の調味料をいかに使いこなすかを考えています
加藤 私もこれまでクリームソースや中華の合わせ調味料は市販のものも使っていましたが、小竹さんの本を読んで自作するようになりました。「こんなに簡単に自分で作れるんだ」と思って。比率で覚えるとタレを買わなくてすみますね。
小竹 そうなんです。その代わり、調味料はちょっといいものを買うのがポイントです。自分で作るとそれだけでコスパがいいので、数百円でいいから調味料に投資すると味が確実に底上げされます。
加藤 小竹さんのレシピを作ってみて思ったのは、おいしいものってシンプルですよね。プロの料理人の方も、大々的には言えないけれど素材がよければ簡単においしく作れるとおっしゃいます。この本はそんなプロの手の内を明かしてしまった本かなと思いますね。
男性が知りたがる料理の正解は?
加藤 うちには18歳の息子がいるのですが、ステイホーム期間に「料理をしたい」と言うので、この本に載っている「豚ロースのレモンソテー」を勧めました。知人がSNSで「激ウマだった」と書いていたので、おいしいらしいよ、と。
すると息子に大ヒットして、それから毎日のように豚ロースのレモンソテーを作ってくれたんです。簡単に作れるし、見映えがすごくいいから「やった感」があるんでしょうね。
小竹 意外なんですけど、男性は「バエ(映え)」重視の方が多い印象です。もともとビジュアルの良さは若い世代への導入として入れた要素だったのですが、蓋を開けてみると男性は全世代的にビジュアルから入る方が多かった(笑)。
カレーをスパイスから入ったり、包丁や鉄鍋から入ったり、男性は味以外からのほうが入りやすいのかもしれません。
加藤 確かに男性は道具好きですよね。そんなに料理をしないわりにパスタ鍋が欲しいと急に言ってきたり。
小竹 そういう方が本書のポルチーニのクリームパスタや、ムール貝のワイン蒸しなど「映えるレシピ」を作ってくださっているようです。この間もお仕事でご一緒している先輩男性が「クスクスのサラダ作ったよ」と写真を見せてくれました。
加藤 主婦的な感覚では、クスクスや黒米は使い切れるか不安でそれ抜きで作りたくなりますが、男性はチャレンジする人が多いんですね。
小竹 作っている自分自身を素敵だと思えるのがモチベーションにつながるのかもしれません。いま若い男性向けの料理教室をやっていますが、まずは「その姿がかっこいいよ!」とどんどん言っています。
加藤 料理は女性のものと考えず、普通に男性が料理できることってこれからは当たり前になるでしょうね。
小竹 若い男性からよく聞かれるのが、「好感度アップの料理」なんです。本にも書いた「家族のために料理しない」というキーワードに女性はものすごく反応するのに対して、男性は家族のために料理するという言葉に反応する人が増えました。時代は大きく変わってきたなと感じます。
加藤 わが家もいまは娘より息子のほうが料理に積極的です。
小竹 だから本書を男性も多く手にとってくださっているのはうれしいです。文章がメインなので、読んでいただくと「なぜ?」と思う部分もがわかりますし。
加藤 確かに、男性は理由付けがセットだと入りやすいと思います。私自身も、魚を沸騰してから鍋に入れる理由を考えずにずっとやっていましたが、この本を読んで「そうだ、そうだ」と納得しました。料理って意外と教わる機会がなく今まできていることが多いですよね。
小竹 理由がわかると納得して進めますよね。この本を気軽に料理教室に参加するようなイメージで読んでいただけたらうれしいです。
1973年京都市生まれ。1996年東京大学経済学部卒業。国際電信電話(現KDDI)に入社。その後、渡米。帰国後は中学受験、子どものメンタル、子どもの英語教育、海外大学進学、国際バカロレア等、教育分野を中心に「プレジデントFamily」「ReseMom(リセマム)」「NewsPicks」などさまざまなメディアで旺盛な取材、執筆を続けている。一男一女の母。このたび、『子育てベスト100』を上梓。高濱正伸氏(花まる学習会代表)が「画期的な1冊が誕生した。長年の取材で得た情報を、親としての『これは使えるな』という実感でふるいにかけ、学術研究の裏付けやデータなども確認した上でまとめあげた力作である」と評するなど話題となっている。