絶滅危惧種の絶滅が、未曾有の事態を招く可能性もある

――絶滅危惧種って話題になりますが、絶滅危惧種が絶滅すると、何が問題なのですか?

今泉 例えば、日本人が大好きな寿司ネタのクロマグロ。マグロは陸に上がると体温が上がりすぎてすぐ腐ってしまう性質があり、昔は「腐りやすくてまずい魚」と、猫でも食べないと言われているくらいでした。

ところが冷凍の技術が格段に進歩し、釣られたら即マイナス60度の冷凍庫で凍らされ、世界中の人が美味しいと食べるようになったため、絶滅しそうになっています。

動物学者が「今こそ『絶滅』を学ぶべき」と語る理由

マグロが絶滅しそうになると、海の中の生態系が崩れます。マグロより小型の魚やプランクトンの数が増えすぎたり、あるいはこれまでマグロを恐れて潜んでいた深海魚が海面近くに上がってきて、深海にいる未知なウイルスを持ち込むことで他の魚を殺してしまったり、あるいはもし人間がそれを食べたら、新型コロナウイルスのような猛威をふるう可能性もあります。

他にも私たちの身近なところでは、ウナギやラッコ、ホッキョクグマやコアラも絶滅危惧種です。

その数は調べられているだけで3万種以上もいます。

「食う・食われる」の関係で絶妙なバランスを取ってきた生態系が、人間の引き起こす大量の捕獲や地球温暖化などが原因で崩れようとしている今、私たちはいち早く原因を取り除く必要があります。

動物学者が、今、伝えたいメッセージ

――今の子どもたちに、どんなことを学んでほしいですか。

今泉 僕たち人間は、この地球で一番強くて、なんでもできる!とはけして思わないでもらいたいですね。

人間は地球には勝てない、ってことをわかってほしいんです。

僕らが、寒さも暑さもしのげるのはエアコンのおかげ。石油や石炭などの化石燃料を使っています。

ところが、それによって温室効果ガスが増えて地球温暖化が進み、自然災害も増えてきています。

さらに、日本では蛇口をひねればきれいな水がいくらでも出てくるけれど、世界では人口がどんどん増え、水が足りなくなってきています。

山や森を切り開いて、人間が住む場所を広げていけば、その土地の生き物を滅ぼすだけでなく、新しいウイルスや細菌に感染する危険もあります。

人間は地球を自分たちの住みやすい星に変えてきたけれど、それは他の生き物たちから見たら、地球はとても住みにくい環境に変わってしまい、絶滅の危機に瀕しているものがたくさんいる。そして徐々に人間にとっても、未来永劫、住みやすい星であり続けられるかは危うくなっています。

こうして地球を住みづらい星にしないためには、人間ばかりが欲張りすぎないで、程々のところでバランスを取り、他の生き物たちと共存することが大切です。

そのためにも、絶滅についての正しい知識を知り、いろんな生き物たちが絶滅した理由をこの本で勉強して、これからこの地球で、人間も含めた生き物たちが生き残るにはどうしたらいいか、自分には何ができるかを考えてみてほしいな、と思います。