しかし、働く人だけで、客にPCR検査を行わなかったら、感染防止策としてはあまり意味がないのではないでしょうか。“夜の街”の客で感染した人が市中感染を広げる可能性は十分にあるからです。時系列的にも、まず6月上旬から“夜の街”での感染が増え出し、7月になって“夜の街”以外での感染が増えて東京全体の感染者数も激増しているというのは、初動段階で“夜の街”での感染拡大を防げなかったからではないかと思えてしまいます。

 そう考えると、“夜の街”で客にまでPCR検査を広げるのが難しかったのなら、クラスターとなったホストクラブやキャバクラを休業させるべきでした。しかし、休業協力金を払う財政的余裕がないからなのか、そうした必要となる対策は何も講じませんでした。

 ちなみに、感染対策が手薄になった証左として、東京都の対策本部の開催状況を見ると、緊急事態宣言解除までは週に1度程度のペース開催されていたのが、6月になると2、11、30日と3回しか開催されていません。6月上旬から“夜の街”問題が騒がれ出していたのに、11日から30日まで対策本部は開催されていないのです。

 小池都知事は、4月上旬に独自の感染防止策を講じようとしたら政府に介入され、“(知事の)権限は社長かと思ったら、天の声がいろいろ聞こえて中間管理職になった”と発言しています。

 その頃はそれくらい感染防止策の策定に前向きだったのが、7月上旬に会見で再度の休業要請について問われると、「国の再度の緊急事態宣言を行われた場合、改めて判断が必要」と、以前と真逆の受け身の姿勢になっていました。こうした状況を見ても、緊急事態宣言の解除後は、最近になって感染者数が激増するまでは新たな感染防止策を主体的に講じる気がなかったことが分かります。

 7月上旬に新宿区がPCR検査の受診を促すために「感染者に10万円支給」、豊島区がクラスター対策として「休業要請に応じた店に50万円支給」と、区が独自の感染防止策を打ち出しています。それは逆にいえば、それらの区の“夜の街”で感染者が激増しているのに、東京都が何も感染防止策を講じないので、やむなく区が独自にやらざるを得なかったということだと思います。

 小池都知事は今になって、「区の独自の取り組みを都が支援する」といった趣旨の発言をしていますが、本来は東京都が感染防止策を講じる主体なのです。かつ、新型インフルエンザ特措法上は、知事に市町村の対応の総合調整を行う権限があるにもかかわらず、新宿区と豊島区が異なる取り組みをしているのを放置しているというのも、無責任極まります。

“規制”より“推進”を優先した西村大臣

 ただ、小池都知事だけを責める訳にいかないのも事実です。政府、特にコロナ対策の担当大臣である西村大臣にも大きな責任があるからです。

 政府は緊急事態宣言解除以降、「感染拡大の防止と社会経済活動の維持の両立」の実現を目指していますが、5月25日以降の政府の対応や西村大臣の発言などを見聞きすると、感染防止と経済活動のバランスを取るどころか、明らかに感染防止より経済活動の方に力点が置かれていました。6月上旬以降、東京で“夜の街”の問題が顕在化していったにもかかわらずです。それは結果的に、「緊急事態宣言解除後は経済優先」という誤ったメッセージを国民や地方の首長に対して送ってしまったことに他なりません。