新しい治療法(薬や手術、医療機器など)が有効だと証明するためには、いくつもの段階を踏んで、安全性と有効性を確かめる必要がある。なぜなら、扱うのは人の命であり、安全性を確認しないまま拙速な判断で物事を進めると、本来なら失わずにすんだ命を失ってしまうことになりかねないからだ。新しい治療法として確立するまでの道のりと基本ルールを解説する。(サイエンスライター 島田祥輔)
「新しい治療法」を
確立するまでの道のりとは?
国(厚生労働省)から薬や医療機器として承認されるためには、実際の患者でテストして、安全性と有効性を証明するステップが必要不可欠だ。そのステップにはいくつかの種類がある。
新しい治療法に関係する研究全般を「臨床研究」と言い、似たような言葉に「臨床試験」と「治験」がある。それぞれの意味は次のようになる。
【臨床研究】
ヒトを対象に行われる医学研究全般のこと。新しい治療法のテストだけでなく、ある病気の患者の血液データを集めて病気との関係を調べることも、臨床研究に含まれる。
【臨床試験】
治療を兼ねた試験のこと。新薬や新しい診断方法、ワクチンなどの安全性や有効性を確かめたり、すでに使われている薬の長期的な影響を調べたりする。この後で詳しく解説するが、主に3ステップある。
【治験】
臨床試験の中でも、製薬会社や医療機器メーカーなどが、厚生労働省から薬や医療機器としての承認を得るために行う試験のこと。事前に厚生労働省に届け出をする。