リモートワーク下の
イノベーションを妨げる壁

 さて、それぞれのプロセスはリモートワークによって、どのように変わるのだろうか。

1. 誰かが何かを思い付く

 思い付きは、何か新しいものに出会ったときに生まれる可能性が高い。したがって、リモートワークという新しい働き方によって、今まで知らなかったことに触れる機会も増え、何かを思い付くこともあるだろう。その意味ではあまり大きな阻害要因はなさそうである(一方で、旅行もできず、社外の人との付き合いも減ることで、今まで得ていたルートからの刺激は確実に減ることが予想されるが)。

2. 周りに思い付きを言ってみる

 周りに思い付きを気軽に言ってみる、という機会はとても重要だ。「おっ、それおもろいなあ」「うちの子どもなら絶対使うよ、それ」みたいな反応が得られることから、自信と遂行に向けての勇気のようなものが芽生える。

 オフィスでは、半分雑談のように思い付きを皆と共有できるのだが、リモートでは気軽に話しかけるわけにもいかないから、そのあたりが弱くなる。もちろんチャットツールを利用して、リモートでも雑談タイムなどを作ることで補完はできるが、直接の会話の気軽さ、手軽さには負けるので、おのずと頻度は減るだろう。

3. データを集め、企画書のようなものに仕上げる

 社内外にあるデータを集め、コンセプトを固めて、企画書(のようなもの)を作る。コンセプトを煮詰めたり、多方面からのデータ分析をしたりする際に、他者からのサポートは有り難いものだ。

 オフィスで皆が一緒に働いていたときは、発案者がうんうんうなって考えたり資料を漁ったりする姿にほだされて、思わず周囲が手伝ってしまうことも多かっただろう。サポートしているつもりが、いつの間にか自分も真剣に考えていたりした。一方、リモートになると、努力している姿がリアルには見えなくなってしまう。助けてあげたい気持ちがないわけではないが、薄れる。

 しかも、こうした自発的に始まる企画書づくりは「正式にアサインされた仕事」ではない。つまり、こうした仕事は、リモートワーク下においてはタスクにならず、取り組みづらくなる。もちろん、発案者も周囲にお手伝いしてください、と気軽に言えなくなってしまう。ゆえに、この段階でもイノベーションが進む可能性が低くなる。