――編集者の大切な役割の一つは「わからない」ことを、恥ずかしがらずに専門家・著者に伝え続けることだと考えています。鎌田さんには、私からのしつこい相談に丁寧に答えていただきました。本書は、イラストのかわいらしさもあり、まさに「超入門書」に仕上がったと思います。最後に、改めてゲーム理論の魅力と、今後書いてみたい本についても教えてください。

アメリカで活躍する若き日本人経済学者「ゲーム理論」は、「社会や人間関係」の理解に役に立つ鎌田雄一郎(かまだ・ゆういちろう)
1985年神奈川県生まれ。2007年東京大学農学部卒業、2012年ハーバード大学経済学博士課程修了(Ph.D.)。イェール大学ポスドク研究員、カリフォルニア大学バークレー校ハース経営大学院助教授を経て、テニュア(終身在職権)取得、現在同校准教授。専門は、ゲーム理論、政治経済学、マーケットデザイン、マーケティング。著書に『ゲーム理論入門の入門』(岩波新書)。
Photo: Jim Block

 そうですね、イラスト! 光用千春さんの描かれたイラストは、本書でとても重要な役割を果たしています。読者が物語の中に入っていきやすくするのはもちろん、かわいい解説図をつけていただいて、登場人物の思考回路がポイントを押さえて描くことができました。イラストのおかげで、本の分かりやすさが格段にアップしたと思います。

 ゲーム理論の面白さは、「論理的に突き詰めて考えると、社会や人間関係がよりよく理解できる」ということですね。「そんなことは日々の生活でやっている。ガクシャの考えた理論を振りかざしたところで何が分かるんだ。大きなお世話だ!」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。僕も勉強する前までは、まさにそれが社会科学に対するイメージでした。でも、実際にゲーム理論を勉強して研究してみると、少し考えるだけで、今までの自分では持っていなかった視点で社会を見られる、ということが分かりました。

 専門家となった今、情報の発信者としては、将来はこの面白さを多くの人、特に小さい子どもに知ってもらうことが目標です。「こんな面白い研究や勉強があるんだよ」っていうことを、小学生ぐらいの子どもに知ってもらいたいなってずっと思っています。だから今回の『16歳からのはじめてのゲーム理論』よりももっと下の世代の子どもたちにゲーム理論や経済学の面白さを伝えられるような本も、いつかは書いてみたいですね。