アメリカで活躍する若き日本人経済学者「ゲーム理論」は、「社会や人間関係」の理解に役に立つ
――編集者の大切な役割の一つは「わからない」ことを、恥ずかしがらずに専門家・著者に伝え続けることだと考えています。鎌田さんには、私からのしつこい相談に丁寧に答えていただきました。本書は、イラストのかわいらしさもあり、まさに「超入門書」に仕上がったと思います。最後に、改めてゲーム理論の魅力と、今後書いてみたい本についても教えてください。
そうですね、イラスト! 光用千春さんの描かれたイラストは、本書でとても重要な役割を果たしています。読者が物語の中に入っていきやすくするのはもちろん、かわいい解説図をつけていただいて、登場人物の思考回路がポイントを押さえて描くことができました。イラストのおかげで、本の分かりやすさが格段にアップしたと思います。
ゲーム理論の面白さは、「論理的に突き詰めて考えると、社会や人間関係がよりよく理解できる」ということですね。「そんなことは日々の生活でやっている。ガクシャの考えた理論を振りかざしたところで何が分かるんだ。大きなお世話だ!」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。僕も勉強する前までは、まさにそれが社会科学に対するイメージでした。でも、実際にゲーム理論を勉強して研究してみると、少し考えるだけで、今までの自分では持っていなかった視点で社会を見られる、ということが分かりました。
専門家となった今、情報の発信者としては、将来はこの面白さを多くの人、特に小さい子どもに知ってもらうことが目標です。「こんな面白い研究や勉強があるんだよ」っていうことを、小学生ぐらいの子どもに知ってもらいたいなってずっと思っています。だから今回の『16歳からのはじめてのゲーム理論』よりももっと下の世代の子どもたちにゲーム理論や経済学の面白さを伝えられるような本も、いつかは書いてみたいですね。
「社会」で、考え悩むあなたへ――著者より
ゲーム理論は、経済問題、社会問題、ビジネス、そして人間関係、全ての局面において我々に示唆を与えてくれます。
むしろ、それらの局面においてゲーム理論を知らないのは、羅針盤なしに航海に乗り出すようなものです。実際、ゲーム理論は大学で教えられる経済学の中で最も重要であると言っても過言ではないでしょう。
どの経済理論も多かれ少なかれ、ゲーム理論の思考法に依拠しているからです。そんなゲーム理論、「難しそう」とか、「聞いたことはあるけれど、いったい何なのかよく分からない」とか、思われている方は多いのではないでしょうか。
この本を手に取られた方には、「ゲーム理論は、いつかは勉強したいと思っていたけれど、何から手をつけていいのか分からない」という方もいらっしゃるかもしれません。
私もゲーム理論家として情報発信をしていく中で、「難しいことはさておいて、ゲーム理論をまずは大ざっぱに理解したい」「思考のセンスを磨きたい」という要望に多く出合ってきました。また、世の中の社会問題や身近な人間関係のこじれを見るにつけ、「ゲーム理論の考え方を少しでも身につけていれば、もっと状況をよくできるのにな」と思うことが多々ありました。
そこで、どうやったらより多くの方がゲーム理論を学ぶきっかけを作れるか、そしてどうしたらゲーム理論のエッセンスを効果的に伝えられるか、この本は、社会の中の私たちが考え悩むことをゲーム理論がどのように解決するのか、はたまたしないのか、を6つの物語(と、1つの小話)を通して描いたものです。
初めに重要なお断りですが、この本は、ゲーム理論の教科書ではありません。その証拠に、「ゲーム理論」という言葉も、小難しい専門用語も、物語の中には一切出てきません。ネズミの親子が人様の家に上がり込んだり、昼寝をしたり、そんなことくらいしか起きません。
でもそんなことを通じて、 ゲーム理論の思考法――つまり、「社会の中で考える」ためのセンス――を読者のあなたに身につけてもらえる、それがこの本なのです。
具体的には、この本の6.5個の物語の舞台、およびそこで扱われるゲーム理論のトピックを選定するにあたり、以下の4つの点を心がけました。
1.「社会の中で考える」にあたって、他の人が何をするか、何を考えているかに思いを馳せることは重要です。この点が物語のカギになるような舞台設定・トピック選定をしました。
2.ゲーム理論家たちのおそらく大部分が「ゲーム理論」という学問において重要と見なすであろうトピックのみを扱うことにしました。
3.ゲーム理論は経済学・政治学に広く応用されます。物語で扱うトピックは、理論的に重要なだけではなく、応用上も重要なものを選びました。たとえば第1章は町内会での投票の物語ですが、ゲーム理論が応用された投票の理論は、政治学での分析に多大な影響を及ぼしています。
4.ゲーム理論のトピックのエッセンスが効果的に伝わるように、国の政策や税金などが関わる「大きな社会」ではなく、身近に分かりやすい「小さな社会」の舞台設定を採ることにしました。といっても、小さな社会でも大きな社会でも、必要とされる思考法に何ら違いはありませんので、ご心配なく。
物語の中には、頭がこんがらがってしまうようなことを言う登場人(動)物も出てくるかもしれません。もし頭がこんがらがったなと思ったら、ちょっと飛ばして読んで、話の全体像をつかんでみてください。
それからコーヒーでも飲んでから、また読み進めると、より理解が深まるかもしれません。そうこうするうちに、ゲーム理論の思考法の数々を、読後あなたが知らず知らずのうちに体得している、これがこの本の目指すところです。(本書の「はじめに」より抜粋)。
8/19(水)『16歳からのはじめてのゲーム理論』
刊行記念オンラインセミナー開催!
「ゲーム理論超入門:ゲーム理論とその実践」
鎌田雄一郎氏の新著『16歳からのはじめてのゲーム理論』刊行を記念して、実践を交えてゲーム理論を学ぶオンラインセミナーを開催します。グーグルがその経営戦略にゲーム理論の知見を取り入れることで大きな収益をあげるなど、いまや「ビジネスに必須かつ最強の論理的思考ツール」として大きな注目を集めている「ゲーム理論」。難解な数式を使わずとも、その面白さと有用性を理解していただくことを目指したセミナーです。
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神取道宏氏(東京大学教授)絶賛
「若き天才が先端的な研究成果を分かりやすく紹介した全く新しいスタイルの入門書! 」
松井彰彦氏(東京大学教授)推薦
「あの人の気持ちをもっとわかりたい。そんなあなたへの贈りもの。」
「ゲーム理論」って、経済学の本やビジネス書でも見かける用語で、とても役に立つらしいけれど、いざ関連書を手にとってみると、難しい。
本書は、「ゲーム理論」をなんとか理解したい、数学的な理論にはついていけないがどのような考え方をする学問なのかを知りたいという、読者の切なる願いに、カリフォルニア大学バークレー校准教授の著者が応えるゲーム理論の超入門書!
社会の「意思決定」と「かけひき」を読み解く、最強の考える道具をあなたに。
ゲーム理論は、経済問題を分析するための数学的理論で、利害関係にある人々が、社会で意思決定をするとどのような結果が起きるかを予測し、社会における意思決定の指針を与えてくれる。
経済学、経営学、政治学、情報科学、生物学、応用数学など非常に多くの分野で応用され、選挙の投票行動など様々な社会問題の分析、新商品の価格設定や、新規市場への参入戦略の決定など、GAFAを筆頭にビジネスの現場でも使われている。
経済学の最重要ジャンルであり、どの経済理論も多かれ少なかれ、ゲーム理論を活用している。本来は高度な数式も多数用いられるゲーム理論ではあるが、本書は、イラストを多数用いたストーリー形式で、やさしく、ゲーム理論の考えかた、物の見方が身につく一冊。
ネズミ親子を主役に、ゲーム理論がどのように社会の問題を解決するのかを6つの物語(と、1つの小話)を通して描く。
【本書の「はじめに」より】
この本は、ゲーム理論の教科書ではありません。その証拠に「ゲーム理論」という言葉も、小難しい専門用語も、物語の中には一切出てきません。ネズミの親子が人様の家に上がり込んだり、昼寝をしたり、そんなことくらいしか起きません。でもそんなことを通じて、 ゲーム理論の思考法を読者のあなたに身につけてもらえる本なのです。