第四の治療法として「デジタルセラピューティクス(DTx)」が注目されている。
DTxとは、規制当局から医療用として承認されている「治療用アプリ」の総称で、生活習慣や考え方(認知)のクセを変えることで治療効果が期待できる。
具体的には2型糖尿病や適応障害などが好相性で、心身症の面が強い「早漏」問題にも効果が期待できるかもしれない。
ということで先日、国際性医学会の機関誌に「早漏治療用アプリ」の試験結果が報告された。
早漏とは、ペニスの挿入前や挿入時、挿入直後に射精が生じる状態を指す。主な原因は心理的なもので、認知行動療法など心理療法を中心に治療が行われる。欧米では一部の抗うつ薬も使われているが、日本では未承認だ。
今回の試験は、心因性の早漏以外に健康問題がなく、関係が良好な異性のパートナーがいる男性35人(平均年齢34歳)が対象。
全員が外来での15回の心理療法に参加し、7回目以降は外来と並行して自宅でのワークを追加、1日3回、3カ月間実行してもらった。その際、参加者を「DTx利用群(DTx群)」と書面や口頭指導のみの「非DTx群」に割り振っている。
DTx群のワークは、スマホ画面のアバターに倣って骨盤底筋を強化する運動と、「射精がコントロールできない」「彼女に責められているような気がする」「私は性的に価値がない男だ」など画面に現れるネガティブな言葉を指でかき消す動作を交互に行うというもの。1週間分7パターンの言葉が用意されており、逆にダメージを受けそうだが……。
しかし、途中で抜けた3人を除いて解析をした結果、DTx群は早漏スコアが有意に改善。また治療を終えて、再び早漏と診断されたのはDTx群で17人中わずか1人だったのに対し、非DTx群では15人中10人と大差がついた。根拠のない思い込みを目に見える形で打ち消すことは、想像以上に効果があるのだろう。
親密なパートナーは以前にも増して大切な存在だ。思い込みに囚われる前に相手と向き合おう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)