日本企業(売上高1兆円以上)のCEO報酬の中央値は1.6億円だが、一部のオーナー系企業や欧米企業水準の報酬が設定されている外国人CEOなどを考慮すると、ごく一般的な日本企業のCEOの報酬はおおむね1億円前後、あるいは1億円に届かない方も多いと推察される。さらに日本は高所得者に適用される所得税の税率が高く、実際に使える額はかなり少なくなる。たとえば年間6千万円のCEO報酬で4年間の任期を勤めたとしても手元に残るのは1億円強程度と推計できる。多額にも見えるが、これまでの生活水準や退職後の年月の長さを勘案すると、決して十分とは言えない。

長期インセンティブの不足がもたらす
「オーナーシップの弱さ」

 報酬に関してもう1つ重要な点が、先ほどの図表からも分かるように、日本企業のCEOは長期インセンティブの割合が非常に低いということだ。2020年5月、米テスラのイーロン・マスクCEOが約7億ドル(約750億円)に相当するストックオプション(新株予約権)を得たという報道が話題となった。マスク氏の報酬体系は完全な成果連動型であり、テスラの時価総額や売上高が一定の条件を満たすたびに、一定のストックオプションの行使が可能となるのだ。

 この事例は極端ではあるが、長期の視点とそれにひもづいたインセンティブ設計がなされていなければ、仮に社長やCEOの決断であろうとも、重み、すごみには限界がある。オーナー経営者の決断が時として非常に強く、発言にすごみがあるのは正にここである。彼らは既に財力もある上に、最初から長期インセンティブしかないようなものなのだ。

 私は仕事柄、CEO、CxOの方々との会議に同席させていただくことが多々ある。もちろん全部が全部ではないが、長期インセンティブの不足によるオーナーシップの弱さから、おかしな状況になっていると感じる会議が多い。

 まず、参加人数が非常に多い割には、発言する人がごく一部に限られている。発言者はCEO、CxOの意見やディスカッションを求めているというよりも、淡々と現況報告をする。パワーポイントのスライドは枚数が多く、もし質問や指摘を受ければ、「はい、それも検討しております」というような形式的な回答が連発する。

 短期間で移り変わる担当者の一時的な集まりのような、少し他人事のような空気すら流れることもある。「ことの成否を見届けるまでは、絶対に手放さないぞ」といった長期視点によるすごみが感じられないのである。そして、途中まで進めていたプロジェクトをいとも簡単に撤収したり、塩漬けにしたり、話題にすることすら避けたりして、新しい挑戦の芽を摘んでしまうのだ。このような状況になってしまう要因の一つが、トップが強いオーナーシップを持って主導していないことではないかと考えている。