〈3〉1世代、2世代先のファウンドリ・ビジネスを
ファウンドリ・ビジネスに関していえば、台湾のTSMC(ファウンドリ業界1位)、米国のグローバルファウンドリーズ(同2位)と同じようなものを急いで日本に作ることには賛成できません。後追いをするだけだからです。むしろ、1~2世代先の技術ノードを対象にした最先端ファウンドリを、半導体業界のみならず産官学を上げたオールジャパンで準備すべきではないでしょうか。
そして我が国がもともと得意としてきた半導体の物づくりのノウハウや最先端の高効率生産システムの導入などに加え、TSMCなどのファウンドリ・ビジネスを徹底的に調査・研究することで、ユーザーに取って魅力のある新たな要素を付加したものにする必要があります。
同時に半導体メーカーは、先端ファウンドリで流すべき新しい製品の開発とそのための設計技術力の向上に努めなければなりません。また、応用分野ごとに特徴のある製品を設計し、最先端ファウンドリに製造委託するファブレスの育成にも、産官学を挙げて対応が求められます。
〈4〉「総合判断のできる技術者」の養成がカギ
優れた技術者の育成が急務です。たとえば企業内で、担当する技術分野ごとに豊富な知識や卓越したスキルを有する人材が必要なことは当然として、同時に分野を横断する思考や実践ができる技術者を意識的に育成することも重要です。
具体的には、「設計と製造の両面に通じて総合的判断ができる技術者」、あるいは半導体の設計で搭載される電子機器に応じて「ソフトウェアとハードェアの両方がわかり最適な切り分けを提案し実現できる技術者」です。
このような人材を育成するためには、社内における計画的な業務ローテーション、社外からの積極的なヘッドハンティングも必要です。そのためには、各部門長は「自部門で何を実行するのか」「そのためには、どんな人材がどのくらい不足しているのか」を把握し、人事部門に上げておくことです。旧電電グループ企業のように、「互いの退職者は採用しないようにする」といった採用行動を取っていたこと自体、愚かなことです。年齢で技術者の首を切らないことも重要です。
「企業は人なり」は、半導体という先端技術分野のビジネスにおいても同様です。ただ、求められる人材の内容が変わってきているに過ぎません。
昔流の「協調性を持ちチームワークの中で決められたことを実行できる人」に加え、限られた分野であれ、「異能を有し、新しい技術や製品を創造できるような個性的な人材」を確保し、重用する制度や雰囲気あるいは文化を企業内に醸成しなければ生き残ることはできないでしょう。
また将来の幹部や経営層として、社内外から適材を発掘するだけでなく、社内各部門の経験をさせ、さらに留学や海外勤務などを通じて、「技術+マネージメント」の両面に明るく広い視野と長期的展望さらには深い洞察力を持った人材を育成していくことです。