〈5〉新しいアプリケーション開発をするためには

 税制などを含めた制度面については、特に台湾や韓国と比較した場合に我が国の現行制度の不利な面は明らかです。特例を含めた対応策が必須です。また、明らかに半導体産業の振興・発展に繋がるように戦略的に練り上げられた国家プロジェクトなどを起こし、それらを通じて産業支援策をもっと進めることが必要です。

〈6〉東南アジアの需要をとらえる

 ロジック系について、半導体メーカーは海外、特に東南アジアにおける需要を的確に捉えてそれを製品化していくための戦略的マーケティングがいっそう重要になります。また、将来を見据えて各分野の最終セットメーカーとの連携をいっそう強め、一緒になって各分野で求められている特徴のあるセット製品を生み出すために必要な半導体をいち早く開発し、それを世界標準化にしていく活動が必要です。

 日本の半導体産業は存亡の危機に瀕しています。半導体は「産業の米」と呼ばれるように、パソコンから大型コンピュータ、有線・無線の通信機器、スマートホンやモバイル端末、家電などの民生機器、各種の産業機器、自動車などに搭載され、情報化の進んだ現代社会を根底で支えています。したがって半導体産業を失えば、これら幅広い産業分野に対するマイナスの影響は絶大です。「半導体は安い外国から買えばいい」と考える人もいますが、そうではありません。なぜなら半導体は、「部品であると同時に、システムでもある」からです。

 したがって国内に半導体産業がなくなれば、それを利用する産業分野も基盤が脆弱になり、徐々に衰退していくことになります。我が国の半導体産業の衰退は、他の多くの産業に悪影響を与えると捉える必要があるでしょう。日本半導体産業の再興のためには、少なくてもここ2~3年の間に衰退傾向に歯止めをかけ、上昇へのきっかけを作らなければなりません。そのためには、ここで述べてきたような項目について考え、実施していく必要があるでしょう。

 我が国の半導体が再興できるか否かは、関係者のみならず産業界全体の決意と決断にかかっています。あきらめずチャレンジしていくことで、未来の扉は開かれるのです。
 


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