〈2〉「万能メモリ」で勝負せよ
  ──爆発的な新市場を切り開く可能性

 DRAMやフラッシュメモリのような、すでに差別化できない少品種大量生産品では、先行する韓国を日本がこれからキャッチアップするのは不可能に近いと考えます。

 本来であれば、日本国内でエルピーダと東芝のフラッシュメモリ部門を統合するなど、思い切った業界再編を行ない、「DRAMとフラッシュメモリの両方を持つこと」で市場の変化に合わせたバランス経営を可能にし、世界市場で十分に競争力のある会社を作ることが必要だったでしょう。しかし、エルピーダが米国マイクロンに買収されることが決まった以上、別の展開を考えねばなりません。

  そこで、次世代メモリという点から考え直すと、1つ、重要な技術革新が見えてきます。それが万能メモリと呼ばれるもので、DRAMとフラッシュメモリの「いいとこ取り」をしたような製品のことです。万能メモリは、
  ・フラッシュメモリのように電源を切っても情報を記憶し続ける不揮発性
  ・DRAMのように高速で書込み・読出しができるランダムアクセス機能

  を合わせ持ったメモリのことです。現在、さまざまな候補技術を巡り世界中で熾烈な研究開発競争が繰り広げられています。この分野で日本は後れを取ってはいませんので、ぜひとも半導体業界が中心になって他産業や国立研究所や大学などの産学官の知恵を結集し、世界に先駆けた技術確立、そして製品化に漕ぎつけてほしいものです。

 近い将来、この万能メモリはコモディティ製品として大市場を獲得する有望な候補であり、日本半導体産業の再興の鍵の1つになる可能性を秘めています。この技術が確立されると、単一のメモリ製品としての使用以外にも、CPUやロジック製品に応用することで、低消費電力化や新たなアーキテクチャの実現などに繋がる可能性も広がってきます。

 また、万能メモリの開発過程で得られたコアとなる新製造技術に関するノウハウを安易に製造装置に体化させるのではなく、半導体メーカーにイニシアチブを残す工夫が求められます。たとえばコア技術の部分についてハードウェアとソフトウェアの一部をオプション的に半導体メーカー側が留保し、それを標準装備の装置とインターフェースさせることで初めて必要な機能が引き出せるような方法も考えられるのではないでしょうか。

 くり返しますが、起死回生策の一環として、万能メモリへの産官学の衆知を集めた取り組みが必須です。世界に先駆けて開発し実用化することで、我が国がメモリで再びトップの座に返り咲くことも決して夢ではないのです。