新型コロナ対策をも宣伝に使い
覇権国家の座を狙う中国

 次の「覇権国家」の座を狙っているのが中国だ。急激な経済発展・軍事力拡大に自信を持ち、権威主義的な政治体制を、民主主義に代わる「世界の政治体制のモデル」だと考えている。そして、新型コロナ対策をも「中国モデル」の宣伝に利用しようとしている。

 中国は、新型コロナの感染拡大が最初に起こった国だった。一方で、徹底した都市封鎖によって、3月19日には、武漢市と同市がある湖北省を含めて18日に中国国内で発生した新規感染例が「ゼロ」だったと発表した。国内での新型コロナの拡散は終息したと、事実上宣言した最初の国でもある(第236回)。

 そして、中国は「感染が広がる他の国を支援する用意がある」とアピールし、都市封鎖の成功を世界に普及させようとした。イタリアがこれに呼応し、全国的な都市封鎖に踏み切った。

 また、中国は欧米への批判を強めた。中国共産党系のメディア「環球時報」は、欧米の新型コロナへの対応の甘さを「個人主義的で生ぬるい」と批判。欧米は日常生活を維持したいという国民の希望を退けることができず、国家総動員の体制を築くことができなかった、甘い対応によって、手遅れになってしまったことを「反省すべきだ」と、中国は訴えたのだ。

 しかし、中国の思惑はうまくいっているとはいえない。まず、イタリアなど中国式の都市封鎖を採用した国の死者数が爆発的に増加したために、その有効性に疑念が持たれてしまった。

 同時に、武漢市の都市封鎖の実態が明らかになった。交通機関が閉鎖され、住民の移動の自由はなくなり、自宅に押し込められ、ドアの外から施錠された。マスクをせずに外出したという理由で市民を当局が拘束。情報統制が強化されて、市民の怒りはネット上から削除された。これら、基本的人権を全く顧みない中国のやり方が世界に知られ、批判されるようになったのだ。

 さらに、中国共産党の隠蔽体質にも疑念が広がった。中国が新型コロナを公表する前に、その危険性を訴えた武漢市の李文亮医師を「デマを流した」として公安当局は処分していた。医師の声を封殺して初動が遅れ、世界的な感染拡大を招いたとの怒りが中国国内で広がった(第232回)。

 そして、その怒りは世界中に拡散している。新型コロナの感染拡大を招き、自国に大損害をもたらしたとして、中国に賠償を求める訴訟が起き始めている。最初に、米国内の企業や個人からの訴訟が相次いだ。それは、英国、イタリア、ドイツ、エジプト、インド、ナイジェリア、オーストラリアなどに広がっている。遠藤誉氏の『感染者急増するロシアはコロナ対中包囲網にどう対応するか――モスクワ便り』によれば、4月29日時点で賠償請求の総額は100兆ドルで、中国のGDPの7年分に相当する額に達していると、フランス国際ラジオ(RFI)が「香港経済日報」の記事に基づいて報じたという。