また、デジタル担当の政務委員(大臣)の天才ホワイトハッカー、オードリー・タン氏は、民間人が開発した「マスクの在庫データを管理するアプリ」を活用した。買い占めなどの混乱がなくなり、政府がマスク全量を買い上げて流通を管理する制度が、円滑に運営されるようになった。

 マスクの計画的な在庫管理に成功した台湾は、感染拡大が深刻な欧米や外交関係がある国にマスク計1000万枚を寄贈した。中国からの圧力でWHOから排除され、外交的に孤立を深めていた台湾が外交攻勢をかけているのだ。

 最後に、新型コロナの死者数わずか1人のベトナムである。注目すべきは、ウェブサイトとアプリを活用した情報開示だ。感染者数がまだ10人程度だった2月8日、ベトナム保健省は新型コロナウイルスの情報をまとめた公式アプリ「Suc khoe Viet Nam(ベトナムの健康)」をリリースした。

 そして、これに合わせて、新型コロナ情報の特設ウェブサイトも開設している。そこには、感染者第1号(BN1)以降、すべての感染者がリスト化され、感染者の年齢、性別、住所、病状、国籍が記載されている。また、感染場所を示す地図も掲載されている。

 米政治誌『ポリティコ』の「新型コロナウイルス対策を最も効果的に行なっている国ランキング」によれば、ベトナムは調査対象の30カ国・地域中で最高評価を受けている。

 韓国、台湾、ベトナムの新型コロナ対策に問題があるとすれば、テクノロジーを駆使することで人権侵害に至る懸念があることだ。しかし、「コンパクト・デモクラシー」は、政治・行政と市民の間の距離が近く、民主主義が機能しやすいのが特徴だ。議員との直接対話や陳情・請願、情報開示請求、市民参加、住民投票など、さまざまな民主的手法を市民が駆使。それによって、政治・行政による人権侵害を防ぐチェック機能を確立することができると考える。

「コンパクト・デモクラシー」こそ
ポストコロナ時代の社会モデル

「コンパクト・デモクラシー」は、コロナ後の社会に出現するスーバー・グローバリゼーションではどんな役割を果たすのだろうか。

中国モデルは限界露呈、ポストコロナは「コンパクト民主主義」を目指せ本連載の著者、上久保誠人氏の単著本が発売されました。『逆説の地政学:「常識」と「非常識」が逆転した国際政治を英国が真ん中の世界地図で読み解く』(晃洋書房)

 スーバー・グローバリゼーションでは、世界の地域と地域が、国家という枠を超えて直接結び付く(第229回)。そして、個人の活動が劇的に広がる。若者がSNSを通じて世界中から資金調達して起業する。表現活動を行い世界的スターになる。在宅のまま世界中の大学の授業が受けられ、権威ある学術誌の枠を超えて、ネット上で最先端の研究が日々アップデートされることも珍しくなくなるだろう。

 このような時代に、従来の国家という枠組みはもはやセーフティーネットとならない。個人の権利を民主主義的に最大限に尊重しながら、テクノロジーを駆使して現場の状況を的確に把握して、スピード対応でリスクを封じ込め、必要な措置を柔軟かつ機動的に行う必要がある。「コンパクト・デモクラシー」こそ、ポストコロナ時代の適切な社会モデルであると考える。