新型コロナウイルスの第2波が到来している今でも、経営陣に危機感がない、対策が不十分なのに経営陣が協力的でないなど、危機管理部門の担当者を悩ませるケースが少なくありません。こうした危機意識の低い経営陣の認識を変えるには、どうすればいいのでしょうか。プリンシプルBCP研究所の林田朋之所長が、実際に危機管理部門などの担当者から寄せられたコロナ対策に関するお悩みに答えていきます。
「経営陣がコロナを脅威に感じていません。
対策をする空気にするにはどうすべきでしょうか?」
Q1. 当社では、実施すべき感染症対策ができていません。経営陣がコロナに脅威を感じていないため、対策を実施しようという空気にならないのですが、どうすればよいでしょうか。
実は、従業員から見て、「経営陣がコロナに脅威を感じていないように見える」会社は、決して少なくありません。このようなケースでは、従業員の労働意欲が下がってしまい、会社へのロイヤルティーも低下し、優秀な人材を手放すことになる恐れがあります。また、SNS上に対策が行われていないことが話題に上ってしまうと、風評被害を招くリスクも懸念されます。
経営者がこのような状態に陥る、あるいは陥っているように見えるのには、災害時に起こりやすい心的ストレス反応、「正常性バイアス」が背景にある可能性があります。
「正常性バイアス」とは、災害などヒトが静的パニックの状態に陥った際、精神的な平衡状態を保ちたいために、直面している脅威を過小評価し、また周囲にその過小評価した内容を声に出して従わせることで、自分自身を正常に保つよう「バイアス」を掛ける行動です。こうした行動は、特に男性の経営者や役員、上級管理職に多く見られます。東日本大震災時にも、これが原因と思われる悲劇が多数起こりました。
ただ、こうした精神状態に陥るのは、災害時のような局面では人間としての「正常」な反応だとも言え、その人に対して、心的ストレスを軽減するなど何か処置を施すのは難しいかもしれません。
ご相談者の会社の経営者も正常性バイアスの状態に陥って脅威を過小評価している可能性がありますので、ここではいったん、ストレスを軽減するのとは異なるアプローチで道を開く方法を検討します。