新型コロナウイルスの感染拡大で多くの交通事業者の経営が悪化している。そんな中、JR東日本などが収益改善のため、時間帯によって運賃に差を設ける「時間帯別運賃」の導入を本格的に検討しているようだ。しかし、この「時間帯別運賃」は単なる値上げに過ぎないし、そもそも鉄道をはじめ、交通事業者に対するわが国の認識が間違っている。(室伏政策研究室代表、政策コンサルタント 室伏謙一)
コロナ禍が直撃した交通事業者
JR東日本などが「時間帯別運賃」導入を検討
新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、ほとんどの交通事業者が苦境に喘(あえ)いでいる。地方の交通事業者の中には「事業の継続が困難である」と判断して、既に廃業を決めたところすらある。
大手の交通事業者も例外ではなく、軒並み大幅減収で、直近の決算でも巨額の赤字が計上されている。例えば航空会社では、日本航空(JAL)が8月3日に発表した今年4~6月期の決算は純損益が937億円の赤字で、再上場を果たして以降、最大の赤字となった。鉄道会社では、JR東日本は7月30日に発表した本年4~6月期の連結決算で最終損益が1553億円と過去最大の赤字となっている。
各事業者にとって収益改善は喫緊の課題ということだが、報道によると、その解決策として、JR東日本などが「時間帯別運賃」の導入を本格的に検討しているようだ。