ダークサイドだけを見てはいけない
グローバリゼーションを考えるうえで、見過ごしてはならないことは、どんな物事にも必ずダークサイドがあるということです。
自動車ほど便利なものはありません。
安心してステイホームができるのも、全国のスーパーマーケットに自動車で日常必需品が輸送されているからこそ、買いだめしなくてもすむわけです。
でも、自動車による事故で、世界では年間約130万人の命が失われています。
まさにこれが自動車のダークサイドです。
でも、今すぐ、自動車を廃止せよという人はいますか?
なぜ130万人もの尊い命が毎年失われているのに、誰も主張しないのかといえば、それよりはるかに多くの便益があるからです。
これはグローバリゼーションも同じです。
確かに、グローバリゼーションのせいでコロナウイルスは蔓延しました。
今、どの国々も戦後最大の経済危機だと騒いでいます。
GDPで前年比マイナス5%、マイナス10%という見通しがエコノミストから出ているわけですから、素人目に見ても、日経平均株価が1万円になっても少しもおかしくない。「戦後最大の落ち込み」ですから。
そうなると、ほとんどの企業は決算が大変です。
多くの人たちが投資信託を買っているので、パニックに陥る可能性も大です。
なぜ、株価は2万円台をキープしているのか
では、GDPが戦後最大に落ち込み、1929年の世界大恐慌に匹敵するかもしれない下げ幅だといわれているのに、なぜ株価が2万円台をキープしているのでしょうか?
もうみなさんはご存じのはずです。
世界各国の中央銀行が互いに連携して、「どんなことがあっても資金を供給し続けるから安心してください」というシグナルを出しているから、みんなが安心して株価が維持されているわけです。すなわち、グローバルな相互の信頼と連帯のおかげで社会がパニックにならないですんでいるわけです。
続きは次回にしましょう。
過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。